ガイダンス + 作業分解(WBS)
— つくりたいものを、実現する方法論

ソフトウェア開発(ISC322)/ 2026年度 秋学期
2026年9月16日(水)5-6-7限 15:25–19:30 国際基督教大学 情報科学メジャー
担当: 太田啓路 ohtak@icu.ac.jp
TODAY

今日のゴールと流れ(15:25–19:30)

先週 9/9 は出張(VR学会)のため休講にしました。ご迷惑をおかけしました。今日はその分、ガイダンス+作業分解を続けてやります。

時間内容
5限 15:25–16:40ガイダンス — この授業は何を学ぶか/私がいま作っているもの/スケジュール・評価・ルール/使う AI と無料の範囲/名言集/まずやってみる(MVP)
6限 16:50–17:30作業分解の講義 — プロジェクトとは/WBS の3ルール/ガント・PRP/太田の事例:AI で WBS を作る/参考事例
6限後半〜7限 17:30–19:20実習 — 自分のプロジェクトを決め、手で分解 → AI に分解させ → 自分で検証 → ガント → 3人で見直し → 再計画 → 提出
19:20–19:30コメントシート(授業時間内に Moodle へ)
今日のゴール「自分のプロジェクト」の WBS が、AI と他人の目を通して、実行できる形になっている 作るものはアプリでなくていい。卒論・就活・学園祭・展示・事業——「実現したいこと」なら何でも。
ABOUT ME

自己紹介 ① 研究者として

  • 太田 啓路(おおた けいじ)/ 情報科学メジャー シニアレクチャラー。担当: 情報科学概論・コンピュータゲーム・映像情報メディア技術基礎・ソフトウェア開発・インタラクティブコンテンツ制作 など
  • 博士(国際情報通信学) — 早稲田大学 国際情報通信研究科 修了
  • 博士論文: 「安全かつ快適な3次元映像表現に関する人間工学的研究」
  • 研究テーマ: 3D ゲームにおける映像酔い(SEGA 共同研究)、立体映像のインタラクティブ応用、文化財の LBVR(ロケーション型 VR)
  • 一貫した問い: 「その映像は、人の身体にとって安全で快適か」
研究も会社も「作れる」だけでは足りない。誰のために・何を確かめて・どう届けるか——この授業で扱う「8割」を、私自身が毎日やっています。
ABOUT ME

自己紹介 ② 映像・VR の会社をやっています

株式会社リ・インベンション(2013年設立/前身 QXD は 2008年〜)代表。秋葉原 UDX の 3D シアター・3D スタジオ担当(2006年〜)が出発点。

VR ライブHMD を 40〜100 台同時制御する没入型ライブ
8K VR 撮影ライブ・舞台・文化財の 360°/180° 3D 制作
2D→3D 変換映画・シアター・プロモーション映像の立体化
生成 AI × 映像制作AI の生成力とプロの審美眼を組み合わせる
3D スキャンフォトグラメトリ・Gaussian Splatting
映像表示システム開発ドームシアター・多面スクリーン・同期上映

仕事の大半は「コードを書く」ではなく、企画・見積・計画・調整・検証・納品。だからこの授業を担当しています。

ABOUT ME

自己紹介 ③ これまでの仕事から

ムーミン
2010 ムーミン
北欧初の 3D 映画
ドラえもん
2014 ドラえもん
全編 2D→3D
新体感ライブ
2020– ドコモ
新体感ライブ 8K VR
NHK 8K3D
2024 NHK
8K3D ドームシアター
青森 空撮
2018– 青森
祭り 360°3D シアター
2010Moomins and the Comet Chase(ムーミン谷の彗星)』北欧初の 3D 映画制作
2014映画『STAND BY ME ドラえもん』全編 2D→3D 変換
2016ONE PIECE FILM GOLD』一部 2D→3D 変換 / 生中継 180°3D VR
20188K VR 撮影(アイドルライブ)/ 青い森ホール「3D 青森祭りの魂」360°3D シアター
2020–21NTT ドコモ「新体感ライブ CONNECT」 8K VR 制作
2024NHK 超体験フェス リアルタイム映像表示システム / NHK 8K3D ワンダービジョン
2025神席 ExWarp VR LIVE(渋谷 FOWS)— ルミエール・ジャパン・アワード VR 部門 特別賞
20263D VR 撮影 / 相馬野馬追 VR / 生成 AI プロモーション / 学内文化財の LBVR(次ページ)
ABOUT ME — いま作っているもの ①

空飛ぶ一畳敷 — 学内文化財「泰山荘・一畳敷」のロケーション型 VR(LBVR)

一畳敷の室内
一畳敷の室内(写真: 湯浅八郎記念館 図録)
3DGS による再構築
3D Gaussian Splatting による再構築
複数人での体験
複数人での LBVR 体験(湯浅八郎記念館)
  • 松浦武四郎(「北海道」の名付け親・1818–1888)が 1886 年に建てた畳一枚の書斎。全国の古社寺の古材 90 点。1930 年代に三鷹へ移築、1999 年 国の登録有形文化財。このキャンパスの泰山荘に現存
  • 表門・一畳敷・敷地を 3DGS で再構築し、Meta Quest 3 を 2 人同時に LAN で同期。畳の上に座って体験する「空飛ぶ畳」の演出、武四郎が語り部
  • 先週 日本バーチャルリアリティ学会 第31回大会(VRSJ 2026・富山)で発表・デモ → 10 月 泰山荘特別公開 → 11 月 一般公開予定(湯浅八郎記念館と連携)

ダッシュボード URL: https://ri-projects.pages.dev/soratobu/

今日の授業との関係 制作期間は 10 日。作業を 12 に分解し、PC 3 台と AI コーディングエージェントで並列に作った。
その「分解の仕方」を、6限で実物として見せます。

論文の共著: 学内の共同研究者・会社の共同開発者・湯浅八郎記念館。文化財の撮影許可と権利確認も「作業」の一部でした。

ABOUT ME — いま作っているもの ②

NO!トレ — 消費者トラブルを疑似体験する AI 教材(青森県の消費者教育事業)

トップ画面
トップ(呼び名・シナリオ選択)
体験するシナリオ
体験する内容を選ぶ
着信画面
「非通知」からの着信——ここから AI と会話
  • 詐欺の電話・勧誘を AI が相手役になって再現し、「見抜く力・断る勇気」を体験で学ぶスマホ/タブレット教材。体験の最後は消費者ホットライン 188 へ
  • 県内 7 市の商業施設を巡回して啓発活動。契約から翌年 2 月末までの長期プロジェクト(企画会社+技術会社+県の連携)。私の会社は AI 教材の設計・開発・端末運用を担当
  • いまは「県の指摘 7 件を 9/28 までに直す」改善計画の真っ最中。方言(津軽弁)対応の go/no-go を 9/19 に判断
今日の授業との関係 一畳敷が「10 日の短距離走」なら、こちらは「9 か月のマラソン」。
フェーズ表と「合格の門」(何ができたら完了か)の書き方を、参考事例で見せます。

※ 授業で使うのはブラウザの Claude と Gemini だけです。

ABOUT ME — いま作っているもの ③

真葛焼 プロジェクションマッピング — 実物の花瓶に映像を投影する

  • 宮川香山 眞葛ミュージアム(横浜)の代表作「崖ニ鷹大花瓶」を 3D プリントした原寸大の花瓶に、映像を投影する常設展示
  • 約 2 分・60fps・縦 4K(プロジェクタを 90°回転)。演出家の絵コンテに基づく 23 カット
  • 制作完了は今月末展示は 10 月 3 日(土)から。いまが追い込み
  • 工程: Blender で 3D の奥行き・マスクを出す → 画像生成 AI でキーフレーム → 花瓶だけは実物を固定座標に合成(AI に描かせない) → 動画化 → 4K 拡大 → 組み立て → 現場でマッピング
今日の授業との関係 絵コンテが 15 カット → 23 カットに増えたとき、作り直さずに済んだのは「カット構成を 1 つの一覧(manifest)で管理していた」から。
作業の一覧を 1 か所に持つと、計画の変更に強くなる——これが今日の WBS の効き目です。後で分解の例も見せます。
POSITION

この授業は「何かを実現するための方法論」を学ぶ授業

ソフトウェア開発を題材にするが、
身につけるのは「つくりたいものを、他の人と協力して実現する」ための手順。

この授業で扱うこと

  • 目的を決め、作業に分解し、計画を立てる(PM・WBS・ガント)
  • 失敗に備える(リスク管理)/小さく始めて確かめる(MVP・KPI)
  • 使う人の目で見る(UX/UI)/正しく動くか確かめる(テスト)
  • 何を作るかを言葉と図で決める(仕様・モデリング)
  • チームで作り、発表し、フィードバックで直す(WS・評価)

過年度の受講生の「プロジェクト」

卒論の執筆/就活(For 内定)/公務員試験合格/TOEIC 800 点/学内新聞づくり/カフェ開発/ICU スケジュールアプリ/速読アプリ/Unreal Engine のゲーム/進路決定

つまり半分はソフトウェアではない。でも手順は同じ。
今日の実習でも、自分が本当に実現したいことを題材にしてください。
WHY

ソフトウェア開発の流れ — 「プログラミングは2割」

営業 → ニーズのヒアリング → 企画提案(見積) → 契約 → 要件定義 → 設計 → プログラム開発 → バグ修正 → テスト → 運用テスト → 納品 → 保守(+マニュアル作成・使い方の指導)

私が毎年シラバスに書いている一文「実際のシステム開発において、プログラミングが占める作業は2割程度に過ぎない」 残り8割は、何を・誰のために・どう作り、どう確かめ、どう届けるか。PM の考え方は、あらゆる仕事で必要になる。
フェーズ主な作業典型的な失敗
要件定義関係者への聞き取り・整理「作ったけど使われない」
設計・計画構造の選択・作業分解・日程「後から直せない」「終わらない」
実装コードを書く(← ここが2割。AI が最も得意)バグ・技術的負債
テスト動作・品質・安全性の確認スキップして後から炎上
運用監視・障害対応・機能追加「誰も全体を知らない」

AI で実装が速くなった分、「何を作るか」「正しいか」「誰が責任を持つか」の重みが増した——これは断定ではなく、今日のデータで一緒に確かめます。

SCHEDULE

スケジュール(9/16〜11/4・毎週水曜 5-6-7限・I-212)

日付テーマ実習(6限後半+7限)課題
9/16ガイダンス+作業分解(WBS)自分のプロジェクトの WBS を AI と作り、検証する課題1 出題
9/23 祝日だが実施リスク管理自分の WBS にリスク登録票・プランB → 計画を直す
9/30MVP・KGI/KPI・再計画 — 小さく素早く始める自分のプロジェクトの MVP と KPI ツリー課題2 出題
10/7UX/UI紙スケッチ → AI で画面案 → 相互批評課題1 締切 10/7
10/14テスト・デバッグ受入条件を書き、AI が作ったテストをレビュー課題2 締切 10/13
10/21モデリング(仕様=完成の条件)+チーム結成3人チームで課題→CANVAS→仕様 v0WS 準備
10/28ワークショップ:制作・発表3限まるごと制作、最後に発表(1チーム6分)課題3 出題
11/4成果物の評価・フィードバック相互試用 → 改善 → 再検証最終レポート 締切 11/18

日程は変わることがあります。確定版は毎回、授業内と受講生ページで案内します。

GRADING

評価と課題

区分割合中身
出席50%毎回の Moodle 出席+コメントシート(欠席レポートの扱いは次ページ)
課題50%課題1 計画書(15%)/課題2 MVP・KPI・受入条件(15%)/課題3 WS 成果物(8%)+最終レポート(12%)
課題出題提出物見るところ
課題1今日(9/16)→ 10/7 締切自分のプロジェクトの計画書: WBS+ガント+リスク登録票(9/23)+最初の一歩の記録(担当=人/AI の列つき)100% ルール・依存・人と AI の分担の根拠・検証の記録
課題29/30 → 10/13 締切MVP 定義+KPI ツリー+受入条件 2 本小さく始める設計・測り方
課題310/28 → 11/4チーム制作物+仕様+AI/人間の分担+検証ログ仕様どおりか・検証したか
最終レポート11/4 → 11/18 締切A4 2枚: 初期計画 → 受けたフィードバック → 採否の理由 → 直した結果 → 卒論・就活への応用判断と証拠。改善量ではない

テスト・期末試験はなし。授業外学習の目安は週 225 分。課題は日本語・英語どちらでも可。

RULES

受講のルール — 出席・コメントシート・欠席レポート

出席とコメントシート

  • 出席は Moodle の出席機能で、授業時間内に各自登録
  • コメントシートは毎回、授業時間内に Moodle へ(19:20 に時間を取ります)。やむを得ず退出する場合は当日 24:00 まで
  • 「授業を受けたことが分かる」内容を書く。コメントは次回シェアし、質問には次回答えます
  • 共有したくない部分は //共有なし 文章 // で囲む

今日のコメントシート(初回)

  1. 自己紹介(メジャー・学年・プログラミング/AI の経験)
  2. つくりたいもの・プロジェクトにしたいもの(1つ以上。なぜそれか)
  3. 今日、AI が見落としたこと/自分が直したこと
  4. 質問・要望

欠席した場合(欠席レポート)

資料(この HTML+補講ビデオ)を読んで欠席レポートを出すと、その回の出席点の8割で出席扱い。忌引き・教育実習はレポートを出せば10割

分量締切提出先
A4 2枚(3コマ分)授業日の1週間後 24:00Moodle「欠席レポート」(コメントシートと別)

書くこと: ①日付 ②要点の要約(自分の言葉で) ③印象に残った事例・名言と理由 ④自分のプロジェクトへの適用 ⑤質問 +その回の実習の成果物(今日なら WBS)

欠席の連絡はメール(ohtak@icu.ac.jp)へ。事前でも事後でも構いません。
TOOLS

使う AI は2つ、どちらも無料 — 「無料はどこまで?」

サービス無料でできること(2026-09-16 確認)上限・注意
Claude
claude.ai
チャット・コード生成・表や図の生成(Artifacts)・Projects 5 個まで・ファイル添付(PDF/xlsx など)。モデルは Sonnet/Haiku5 時間ごとにリセットされる回数上限(数は非公表)。Artifacts を使うには Settings › Capabilities › 「Code execution and file creation」を ON
Gemini
gemini.google.com
チャット・Canvas(文書/コードの横並び編集)・画像生成・Deep Research5 時間ごと+週の上限。添付は 32k トークンまで。混雑時に一部機能が使えないことあり
ChatGPT
(参考)
文章・表・Mermaid のテキストは無料で出せる。データ分析(Python 実行)・画像生成・Canvas は無料でも使えるが別枠の上限ガントを「画像」や「xlsx」で出させると、途中で止まる人が出る。今日は使わない
今日の運用ルール ① 標準は claude.ai、詰まったら gemini.google.com に同じ文を貼って続行(だから2つ)
② 成果物は Markdown の表Mermaid のテキストに固定 — どのサービスでも無料で出せる形
③ 両方止まったら、配布の「保存済み AI 初稿」で続ける。AI を使うこと自体は必須ではない
課金は求めません 自分で課金しているサブスク(ChatGPT Plus・Claude Pro・Gemini など)があれば、そちらを使ってよいです。
Copilot・Cursor・Claude Code などは「世の中にはこういう道具もある」と紹介はしますが、提出物の前提にはしません。
上の表は公式ヘルプで確認した範囲。数値は変わるので、迷ったら各社の料金ページを見てください。
POLICY

AI 利用の約束(シラバス §13)

  1. 提出物は、自分で説明できるように理解する努力をする(分からない部分は調べる・AI に聞き直す・人に聞く)
  2. AI に任せた部分と、自分が判断した部分を提出時に明示する
  3. AI 生成物は出発点。レビュー・検証・改善は提出者の責任
  4. 個人情報・機密・第三者の著作物をプロンプトに入れない
なぜ「理解しようとする」ことが大事か 理解していないものは、直せない(壊すしかない)・間違いに気づけない(動いてる=正しい、と思い込む)・人に説明できない。全部を理解できなくても、「どこが分かっていないか」を言えるようにしておく。
AI の利用は推奨 禁止ではない。「使いこなして、責任を持つ」を 8 週間で身につける。今日の実習は、まさにその練習。
QUOTES

伝説的な開発者の言葉 ①(出典が確かなものだけ)

"Adding manpower to a late software project makes it later."
遅れているソフトウェア開発に人を足すと、さらに遅れる。
Fred Brooks, The Mythical Man-Month (1975)
→ AI エージェントを増やしても、レビューする人の時間は増えない。今日の6限で。
"There was no choice but to be pioneers; no time to be beginners."
先駆者になるしかなかった。初心者でいる時間はなかった。
Margaret Hamilton(アポロ誘導ソフト責任者), WIRED 2015
→ 前例のないプロジェクトの始め方。まず動かす。
"It's easier to ask forgiveness than it is to get permission."
許可を取るより、あとで許してもらう方が簡単だ。
Grace Hopper(COBOL の母), Chips Ahoy 1986
→ まず試作して見せる(MVP)。ただし「承認前に告知」とは違う——実習の練習問題で。
QUOTES

伝説的な開発者の言葉 ②

"Program testing can be used to show the presence of bugs, but never to show their absence!"
テストでバグの存在は示せるが、不在は示せない。
Edsger Dijkstra, Notes on Structured Programming (EWD249, 1969)
→ AI が作ったテストが全部通っても「正しい」証明ではない(10/14)。
"You can't trust code that you did not totally create yourself."
自分で全部作ったのではないコードは、信用できない。
Ken Thompson(UNIX の作者), Turing Award Lecture 1984
→ 全自作せよ、ではない。「信用の根拠をどう作るか」を問う言葉(9/23 リスク)。
"Beware of bugs in the above code; I have only proved it correct, not tried it."
上のコードのバグに注意。私は正しいと証明しただけで、試してはいない。
Donald Knuth(『The Art of Computer Programming』著者), 1977 年の書簡
→ 「正しいはず」と「動かして確かめた」は別。AI の出力にもそのまま当てはまる(10/14)。

残り(Brooks「銀の弾丸はない」/Hoare/Fowler/Torvalds/Beck ほか)は、各回の冒頭で1つずつ。受講生ページに一覧を置きます。

DATA

AI 時代の一枚 — 使う人は増えた。「信頼」「安全」は伸びていない

以下はいずれも公開されている調査レポートです(発行元・対象・時期を併記)。数字は各社の発表値。原文リンクは次ページ。

調査(発行元・種類)対象・時期分かったこと
DORA 2025「State of AI-assisted Software Development」
Google Cloud の研究チーム DORA(DevOps Research and Assessment)が毎年出す業界調査。開発組織の生産性研究として最も引用される
世界の技術者 約 5,000 人への調査(2025年6〜7月)+100 時間超の聞き取り。2025-09-24 公開開発者の 90% が仕事で AI を利用(前年比 +14pt)。AI は「増幅器」——チームの強みも弱みも増幅する。作業の速さ(スループット)は上がったが、リリース後の安定性は下がる傾向が続く。30% は AI が書いたコードを「ほとんど/全く信頼していない」
Stack Overflow Developer Survey 2025
開発者 Q&A サイト Stack Overflow の年次アンケート。世界最大級の開発者調査
177 か国 49,000 人超の開発者(2025年)AI ツールの利用は 84%。だが出力を「正確だと信頼」は 29%、「高く信頼」は 3%66% が「惜しいが、ピッタリではない(almost right, but not quite)」と回答。45% が AI コードのデバッグに時間を取られる
Veracode「2026 GenAI Code Security Report」
アプリケーション・セキュリティ企業 Veracode の年次レポート
100 超の AI モデルに同じコーディング課題を解かせ、セキュリティ検査にかけた(2026-07 公開)AI が書いたコードのセキュリティ合格率は平均 56%——4 年間ほぼ横ばい。モデルが賢くなっても「安全なコード」は増えていない。XSS(クロスサイトスクリプティング)対策の合格率は 15%
DORA 2026「ROI of AI-Assisted Software Development」
同じ DORA チームの追加レポート(2026-04)。※本資料は InfoQ の要約記事経由
導入企業のコスト・効果分析導入初年度は J カーブ——検証とワークフローの適応で、一時的に生産性が下がってから上がる
Faros AI / LinearB(2026)
開発分析ツール企業の利用データ集計。※二次情報・参考値
各社の顧客データ(数万人規模)AI が手伝った変更提案(PR)はサイズ約 2.5 倍・レビュー待ち約 5 倍。コードレビューに使う時間が大きく増加
DATA — 出典と読み方

AI 時代の一枚 — 原文リンクと、授業での読み方

3 つの調査に共通するパターン

  1. 使う人は増えている(90%・84%)
  2. 速くはなる(DORA: スループット向上)
  3. だが信頼・安定性・安全性は伸びていない(信頼 3%、安定性は低下、安全合格 56% 横ばい)
今日の授業に効く読み方速く作れるようになった分、「確かめる」「決める」の仕事が増えた。 だから WBS には、AI に任せる作業と一緒に「人が確認する作業」と「その時間」を書く。

注意: 調査はいずれも「回答者の自己申告」か「特定ツールの利用データ」。AI の効果は課題や使い方で大きく変わるので、「AI で必ず速くなる」とも「危ないから使うな」とも言えない。

MINDSET

まずやってみる — 小さく、素早く始める(MVP)

MVP(Minimum Viable Product)=仮説を確かめるための、最小の試作品。Eric Ries『リーン・スタートアップ』(2011)。

  • Zappos(靴の EC): 在庫を持たず、靴屋で撮った写真だけを載せて「売れるか」を確かめた
  • Dropbox: 製品の前に 3 分の説明動画を公開し、登録待ちが一晩で 5 千→7.5 万人
  • Facebook: 1 つの大学だけで始めた

私が事業計画を書くとき何度も参考にした本が『起業の科学』(田所雅之)。「作り込む前に、欲しがる人がいるか確かめろ」。

MVP の本格解説は別の回(9/30)MVP の作り方・KGI/KPI・リーンスタートアップは 9/30 の授業で扱います。今日は「小さく始める」という姿勢だけ持ち帰ってください。
今日からWBS は「完璧な計画」を作る道具ではない。
「最初の一歩」を決めて、走り出すための道具。
実習の最初に「最初の 1 週間でやる最小の一歩」を 1 行書いてもらいます。
卒論なら「章立て 1 枚を先生に見せる」。アプリなら「画面 1 枚を紙に描いて友達に見せる」。
休憩中に考えておくこと: 「自分のプロジェクトにするなら、何か」(1 行)。

Hopper の「許可より許し」も同じ精神。ただし練習問題で見るように、承認が要る作業を飛ばすのとは違う。

PM 1

プロジェクトとは — 「開始と終了があり、成果物・期限・制約がある仕事」

定義開始と終了のある一連の作業。時間・資源・目標によって制約され、具体的な成果物・期限・予算がある。予算で投入できる資源(人・モノ・カネ)が決まる
定常業務との違いプロジェクトには明確な目標と開始・終了がある/定常業務(経理・人事・サポート…)は何度も繰り返す/プロジェクトには目的を達成するための組織(チーム)ができる
マネージャーの課題時間・コスト・品質のバランスを取り、円滑に進める。不意打ちは日常茶飯事——「曖昧さへの耐性」「変更管理の能力」「顧客第一の思考」が要る
大きなプロジェクトマンハッタン計画(1942・「プロジェクト」という言葉が初めて使われた)/コロンブスの航海/忠臣蔵(討ち入りまでの 1 年 9 か月)/ピラミッド建造/オリンピック・万博/新幹線・ダム/映画・大規模ゲームの制作/新製品の開発/会社の設立
身近なプロジェクト卒業論文/就活(For 内定)/公務員試験・TOEIC・資格試験/学園祭の出し物・サークルの公演/留学の準備/引っ越し/旅行の計画/同人誌・ZINE の制作/YouTube チャンネルの立ち上げ/小さなアプリや Web サイトの開発
太田の今のプロジェクト空飛ぶ一畳敷 VR(10 日)/NO!トレ(9 か月)/真葛焼のプロジェクションマッピング(展示は 10/3 から)/相馬野馬追 VR
過年度の受講生速読アプリ/カジュアルゲーム/ICU スケジュールアプリ/カフェ開発/学内新聞づくり/進路決定/Unreal Engine のゲーム/教育ミニゲーム集
今日決めてほしいこと「自分のプロジェクト」を 1 つ。成果物と期限があって、作業が 30 個は出そうなもの。ソフトウェアでなくてよい。本当に実現したいことを選ぶほど、実習が自分の役に立つ。
PM 1

プロジェクトマネージメントに共通する 12 の作業 — 今日は「分解」「順序」「スケジュール」

#作業中身この授業で扱う回
1目標の設定何を、いつまでに、誰のために今日(Step 0)・9/30 KPI
2作業の分解WBS——大きな仕事を管理できる単位に砕く今日
3作業順序の図示依存関係・ネットワーク図・クリティカルパス今日
4スケジュールの作成ガントチャート・マイルストーン・バッファ今日
5予算の作成人件費・外注・道具10/21(WS 準備)
6チーム内の調整役割・会議・規約9/30・10/21
7報告関係者への進捗報告毎回のコメントシート
8コミュニケーション相談・交渉・合意9/30
9情報提供資料・記録の共有10/21(仕様)
10意思決定go/no-go・優先順位・やめる判断9/23 リスク
11進捗の計測実績を入れて計画と比べる(PRP)今日 Step 7・毎週
12テーラリング型を自分の案件に合わせて削る・足す今日(3 ルールの当てはめ)
私の現場の道具(実話)仕事では長く Backlog(課題管理ツール)を使ってきた。タスクを切って、担当と期限を付けて、進捗を見る——これを手でやっていた。いまは GitHub Issues+AI エージェント。作業の切り方は同じで、切った 1 つ 1 つを AI に渡せるようになった(後で実物)。道具は毎年変わる。変わらないのは「分解して、順序をつけて、確かめる」。 PMBOK(PMI のガイド)第 8 版(2025-11)でもこの骨格は変わらず、AI は付録扱いで「見積り精度を上げる支援の道具」。
WBS

WBS(Work Breakdown Structure・作業分解図)とは

  • プロジェクトの作業を、ある切り口で階層構造に示す(木の図、または箇条書きの表)
  • ワークパッケージ=WBS の最下位の作業。プロジェクトを大きな単位(マイルストーン)に分け → ワークパッケージを洗い出す

WBS の役割

  • 分かる範囲と分からない範囲を把握し、何をすべきかを明確にする
  • メンバーで「成功したイメージ」を共有し、必要な作業を洗い出す
  • 作業の順序を論理的に決め、担当と資源(予算)の基礎になる
  • 実際は、進めながら条件が明確になった時点で計画を更新する
卒業論文プロジェクト
 ├── プロジェクト管理(週1回の進捗確認)
 ├── 研究計画
 │    ├── 章立て1枚を作る(3h)★最初の一歩
 │    ├── 教員に見せて直す(2h+待ち3〜5日)
 │    └── 先行研究15本を要約(7h)
 ├── 調査・実験
 ├── 執筆
 └── 提出・発表

「作る」をそのまま管理すると大きすぎる。「見える・測れる・担当できる」単位まで砕く。

WBS

WBS をつくる5つのステップ

  1. プロジェクトをワークパッケージまで分解する。順序づけ・資源配分・スケジュール作成・監視ができることを目安に。
  2. 各ワークパッケージを定義する。細かさは、プロジェクトの期間・複雑さに見合うものにする。
  3. 引き受ける人が分かりやすい書式で示す。成果物が明確で、それを成し遂げるのに時間がかかるものであること。
  4. すべてを完了すれば目標が達成されることを確認する(=100% ルール)。
  5. プロジェクト・マネージメントの作業も忘れずに入れる。報告書・会議・関係者の承認取り付けを「プロジェクト管理」というまとめタスクで持つ。
2026 年の追加各ワークパッケージに「誰がやるか=人/AI 支援/確認者」と「完了条件」を書く。AI に渡せるのは、完了条件が言葉になっている作業だけ。
WBS

WBS の3つのルール(+今回の当てはめ)

ルール内容今日の実習での当てはめ
100% ルール子要素をすべて足すと親要素と等しくなる。漏れなく・重複なく。最も重要「プロジェクト管理」「レビュー」「引継ぎ」も入れる。範囲外(やらないこと)は書いて外す
80 時間ルール1 日(8h)もかからない作業は小さすぎ、2 週間(80h)以上は大きすぎるので細分化する。報告は 0/50/100% で学生の案件は「次の確認までに完了を判定できる単位」(0.5〜8h 程度)に調整
7×7 ルール1 つの親にぶら下がる子は 7 程度まで、階層は 7 レベル程度まで今日は 2〜3 層、各親 3〜7 項目で十分。7 層まで掘らない

80 時間と 7×7 は目安のルール。自分のプロジェクトで適正な粒度を考えるのが課題。

AI 時代の補足AI に渡す作業は、小さくて、完了条件が明確なもの。粒度が細かいほど委譲しやすく、確かめやすい。一畳敷では「1 つの Issue = 1 つの AI エージェント」だった。

WBS 分解の例 — 5 つ

卒業論文/花見/一畳敷 VR/NO!トレ/真葛焼。ソフトウェアでないものも、太田の実案件も、同じ形に分解できる。
見るところ: ①マイルストーンは 4〜7 個 ②末端の作業は「終わったかどうか」が自分で判断できる ③待ち時間確認が入っている

分解の例 ①

卒業論文の執筆(9/16 → 12/15・自分 1 人・週 12 時間)

IDマイルストーン作業(ワークパッケージ)完了条件工数待ち担当先行
A01A テーマと章立て
〜9/26
先行研究を 5 本ざっと読み、テーマ候補を 3 つ書く候補 3 つが A4 1 枚に4h
A02章立て(目次)を 1 枚にする ★最初の一歩A4 1 枚の目次3h協働A01
A03指導教員に見せて直す「この方向で」の返事2h5日A02
B01B 先行研究
〜10/10
文献を 15 本集めてリスト化(著者・年・主張)表が 15 行6h協働A03
B02各文献を要約し、自分の立場との差を 1 行書く15 本すべてに 1 行9hB01
C01C 調査・実験
〜11/7
調査の設計(質問項目・手順)を書き、教員に確認教員 OK6h3日B02
C02協力者 20 名を募る(依頼文・SNS・授業で声かけ)20 名確保4h7日協働C01
C03実施 → 集計 → 図表を 5 点作る図表 5 点24h協働C02
D01D 執筆
〜12/5
第 1〜2 章(序論・先行研究)6,000 字6,000 字18h協働B02
D02第 3〜4 章(方法・結果)8,000 字8,000 字22h協働C03
D03教員レビュー 2 回と修正「提出可」の返事6h各7日D02
E01E 提出・発表
12/15
体裁チェック(書式・引用・ページ番号)チェックリスト全 OK4hAI 支援D03
E02提出 ◆12/15 → 発表スライドと練習受領メール/10 分で話せる11hE01
Z01Z 管理週 1 回、実績を入れて計画を引き直す13 回分の記録13h
ここが肝作業の合計は約 132 時間。だが待ち時間の合計は 29 日——教員の返事と協力者集め。自分が速くなっても縮まない日数を先に置くと、締切に間に合うかが分かる。
分解の例 ②

花見を企画する(サークル 30 人・4 月上旬・幹事 3 人)— ソフトウェアでない例

IDマイルストーン作業完了条件工数待ち担当先行
A01A 企画
3/1 まで
目的と予算を決める(1 人いくらまでか)幹事 3 人が合意1h
A02候補日を 3 つ出し、参加者に希望を聞く回答 20 名以上1h5日協働A01
B01B 場所
3/10 まで
候補地を 3 か所調べる(桜の見頃・トイレ・アクセス)比較表 1 枚2hAI 支援A01
B02公園の使用許可を申請する許可証が手元に1h14日B01
B03下見(場所取りの範囲・電源・ゴミ捨て場を確認)写真とメモ3hB01
C01C 人集め
3/25 まで
告知(日時・場所・会費・持ち物) ※ B02 の許可が出てからSNS と掲示で告知済み2h協働B02
C02参加者リストと会費の集金30 名分の入金確認3h10日C01
D01D 買い出し
前日
買い物リストを作る(食べ物・飲み物・ゴミ袋・レジャーシート)リストと概算金額2hAI 支援C02
D02買い出し・運搬の分担を決めて買うレシートと現物5hD01
E01E 当日
◆花見当日
場所取り(朝 7 時・2 人)シートを敷き終わる6hD02
E02受付・会計・写真参加者全員の受付4hE01
E03片付け・ゴミの持ち帰り・原状回復公園の人に確認してもらう2hE02
F01F 後始末会計報告と写真の共有、振り返り 1 枚メンバーに送付2h協働E03
Z01Z 管理雨天時の代替案(Plan B)を決めておく代替日と室内案1hA02
ここが肝許可(B02)が出る前に告知(C01)してはいけない——先行 ID がそれを止める。② 片付け(E03)を忘れるのが定番。③ 雨は「起こりうること」——次回のリスク管理で扱う。
分解の例 ③ — 太田のプロジェクト

空飛ぶ一畳敷 VR(10 日間・人 3 名+AI エージェント)

IDマイルストーン作業完了条件(=実物で確かめる)担当先行
A01A 計画・仕様
D0
決めるべきことの質問リストを AI に作らせ、発注者に答えてもらう12 問すべてに回答0.5AI
A02回答をもとに計画書(ゴール・決定事項・リスク)を書く12 トラックに分かれている0.5協働A01
A03トラックごとの仕様書と Issue(1 作業=1 Issue)仕様 12 本・Issue 12 件0.5協働A02
B01B 基盤
D1〜D2 ★最優先
Quest 3 で空のシーンが起動する(OpenXR・APK ビルド)実機で起動を確認1A03
B022 名同期と位置合わせ(手動 2 点 → 自動)2 台で同じ空間に立てる2B01
C01C シーン制作
D1〜D3
6 場面の骨組みを PC で再生できる状態にするPC で通して再生1AI×6A03
C02各場面に実素材を入れる(3DGS・絵巻・木片)Quest 実機で場面ごとに確認2AI人がレビューC01,B01
D01D 語り・キャラ
D1〜D3
台本(story.json)を確定し、音声を一括生成全台詞の音声ファイル1AIA02
D02語り部のモーション(座り・上半身)不自然でないと人が判断1
E01E 統合・試験
D4〜D6
10 分に連結(ホスト操作盤つき)◆統合 v1 が通しで動く1協働C02,D01,B02
E02通し試験 1 名 → 2 名/性能調整(72fps)◆2 名で 10 分完走2E01
F01F 現地
D7〜
◆正午フィーチャーフリーズ/最終 APK・機材梱包以降はバグ修正のみ1E02
F02現地設営・リハ → ◆デモ会場の光量で位置合わせが通る3F01
Z01Z 管理毎朝 AI が前日の進捗を要約 → 人が当日の割当を決める10 日分の記録0.5/日協働
ここが肝B01(基盤)が最初——これが無いとどの場面も実機で確認できない=クリティカルパス。② 実装は AI に渡したが、完了条件はすべて「実機で確かめる」。③ 判断日(技術が間に合うか)とフリーズ日を着手前に決めた。
分解の例 ④ — 太田のプロジェクト

NO!トレ(9 か月・企画会社+技術会社+県)— 長期・複数組織の例

IDマイルストーン作業完了条件(合格の門)期間担当先行
A01A 立ち上げ
契約〜6月中旬
キックオフ(役割・連絡経路・決め方を合意)議事録に全員の合意1週
A02シナリオ 3 本の内容を委託者と詰める県の監修 OK4週協働A01
B01B 教材開発
〜7月
AI が相手役になる会話の作り込み(3 シナリオ)〔機械〕自動テスト 72 本が通る6週AIA02
B02倫理のガードレール(言ってはいけないこと)〔人〕県と読み合わせ2週A02
C01C 端末・運営
6月中旬〜7月
端末 3 台の調達・設定(初期化した状態から通しで確認)〔人〕3 台×3 回=9 回で確認3週
C02使用マニュアル作成 → 運営スタッフ研修スタッフが 1 人で回せる3週協働C01,B01
D01D 会場交渉
7月〜
県内 7 市の商業施設と交渉・日程確定7 会場の日程が確定8週A01
D02会場ごとの動線・電源・掲示の準備チェックリスト全 OK各1週D01
E01E 啓発活動
8月〜12月
7 市を月 1〜2 市のペースで巡回(体験 → 声かけ → アンケート)◆12 月末に全 7 市完了20週C02,D02
F01F 報告
1月〜2月
アンケート集計・分析集計表とグラフ3週AI 支援E01
F02業務報告書 → ◆2/26 納品/教材の運用引継ぎ県の受領4週F01
Z01Z 管理版ごとに期日を引き直す(v1.1 → v1.2 → v1.3 → v2.0)各版で〔機械〕〔人〕の門を通す随時
ここが肝① 完了条件を 〔機械〕=毎回スクリプトで測る/〔人〕=耳と実機でしか分からないに分けて書く。② 会場交渉(D01)は最初から動かす——相手のある作業は待ち時間が長い。③ 予備日には作業を入れない。
分解の例 ⑤ — 太田のプロジェクト

真葛焼 プロジェクションマッピング(展示 10/3・演出家+美術館+制作)

IDマイルストーン作業完了条件工数担当先行
A01A 絵コンテ
〜7月上旬
演出家の絵コンテを受け取り、カット構成の一覧(manifest)にする23 カットが 1 ファイルに8h
A02各カットの尺・動き・つなぎ方を決めるカットごとに 1 行の指示12h協働A01
B01B 3D 下地Blender で奥行き(depth)とマスクを自動レンダリング23 カット分が揃う10h自動A02
C01C 静止画
〜8月
色のパレットを解析し、画像生成 AI でキーフレームを作るカットごとに 1 枚40hAIB01
C02花瓶を固定座標に合成(AI に描かせない)全カットで花瓶の位置が同じ12h自動人が確認C01
C03静止画の段階で演出家と合意する「この絵で進めて」の返事6hC02
D01D 動画化
〜9月中旬
image-to-video で各カットを動かす23 本のクリップ30hAIC03
D024K へ拡大 → つなぎ目を数値で検証境界の差が基準値以内16h自動D01
E01E 仕上げ
◆9月末 制作完了
組み立て・ループ化・音の同期(約 2 分・縦 4K・60fps)通しで再生できる20h協働D02
E02美術館に見てもらい、修正◆先方 OK8hE01
F01F 現場
◆10/3 展示開始
実物の花瓶に合わせて投影を調整(マッピング)形がぴったり合う12hE02
F02常設運用の手順書(毎日の起動・停止・トラブル対応)館の人が 1 人で回せる6h協働F01
Z01Z 管理カット一覧(manifest)を更新し続ける常に最新が 1 か所随時
ここが肝① 途中で 15 カット → 23 カットに増えた。作業の一覧が 1 か所にあったので、組み直さずに済んだ。② 動画にする前に静止画で合意(C03)——後戻りのコストが一桁違う。③ 実在する花瓶は AI に描かせない。人が決める線をどこに引くか。
WBS

100% ルールで漏れやすい作業

漏れやすい作業なぜ漏れるか
レビュー・確認・試作を見せる「作る」だけを書き、「誰が見て OK と言うか」を書かない
待ち時間(返答待ち・納品待ち・審査)作業 0 時間なので工数に出ない。でも日数はかかる
承認・許可・交渉「始めてよい条件」を書かないと、許可前に告知するような事故が起きる
プロジェクト管理(打合せ・報告・予算)「みんなでやる」と思って誰も書かない
片付け・引継ぎ・ドキュメント終わったあとの作業は忘れる
AI 出力の検証「AI が作ったから動くはず」と思い込む。今日の実習で必ず計上する

チェックの問い: ①成果物を全部作るための作業が入っているか ②同じ作業が 2 か所にないか ③「あとでやる」と先送りにした作業はないか

SCHEDULE

ガントチャート・依存関係・クリティカルパス

1910 年代、Henry Gantt が工場の作業を「タスク×時間軸」の横棒で描いたのが起源。フーバーダム、NASA、いまも製品ロードマップに。WBS の「何をするか」に「いつ・誰が・何の後に」を加える。

作業(卒論の例)9月後半10月前半10月後半11月12月
章立て1枚→教員確認(待ち5日)
先行研究15本を要約
調査設計→協力者募集(待ち7日)→実施→分析
執筆(第1〜5章)
教員レビュー2回(各 待ち7日)→修正
体裁チェック→提出 ◆12/15
  • 依存関係: 教員の承認が出るまで調査に入れない。灰色は待ち時間(作業 0h だが日数がかかる)
  • クリティカルパス: 遅れると全体が遅れる連鎖 — 章立て → 承認 → 調査 → 分析 → 執筆 → レビュー → 提出。ここに余裕(バッファ)を置く
  • AI で執筆が速くなっても、教員の返答待ちは縮まない。速くできるのは「自分の手番」だけ
RE-PLANNING

PRP(Project Re-Planning・計画の再設定)— 計画は直すもの

  • 企画段階で作られる計画の多くは、実現方法を無視していたり、現実離れしている
  • PRP=計画を正しく修正し、ヒト・モノ・カネ・時間を必要な分だけ盛り込んで、成功するべくして成功する計画に作り直すこと

手順

  1. 企画段階の計画(Ⅰ)を元に、必要な箇所を修正して実行計画(Ⅱ)を作る
  2. 進行中に実績データ(Ⅲ)を取って蓄積する
  3. 終了時に Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ を比べ、差分を明確にする → どの計画が妥当だったかを判断

効果

  • 大雑把な計画を立てる習慣が是正される
  • 個人レベルでも、うまくいったこと・いかなかったことが客観視できる
  • 見落としていた小さな成功と失敗が顕在化する
今日の実習で最後に「協力者の返答が 3 日遅れる」と条件を変えて、計画を引き直してもらう。これが PRP の初体験。一畳敷では、これを毎朝 AI と一緒にやっていた。
OHTA'S WAY

太田の事例「AI で WBS を作る」— 昔と今

昔(〜2023)

  • ホワイトボードと Excel で自分で分解。Backlog に手で登録
  • 抜け・漏れは、痛い目に遭ってから気づく
  • 計画の更新は「時間があるとき」=ほぼ更新されない

今(2026・一畳敷 VR の実物)

  • AI が初稿を作り、人が判断して直す。分解の速さは 10 倍、でも確かめる仕事は増えた
  • 切った作業がそのまま AI への依頼文になる(1 Issue = 1 エージェント)
  • 計画の更新は毎朝。AI が前日の進捗を要約し、人が当日の割当を決める
6 段の流れ(次ページで実物)
  1. 質問 — AI に「決めるべきこと」の質問リストを作らせ、発注者が答える
  2. 計画 — 回答を渡して計画書(ゴール・決定事項・作業分解・担当・リスク)を書かせる
  3. 仕様 — 作業ごとに「何ができたら完了か」を書かせ、人が確認
  4. Issue — 1 作業=1 Issue。チェックリストで下位タスク
  5. 実行 — AI エージェントが実装、人がレビューしてマージ
  6. 毎朝の再計画 — AI が要約 → 人が割当(=PRP)

学生版: ①②は今日 Claude/Gemini でそのままやる(Step 0〜2)。④は「表の 1 行=AI への依頼になる粒度」。⑥は「週 1 回、実績を入れて引き直す」。スプレッドシートが正本、AI は初稿・質問・変換の相棒。

OHTA'S WAY — 実物

空飛ぶ一畳敷 — 12 に分解した作業と、人/AI の担当

ID作業(トラック)担当
S01MR 導入(天の声・表門)実装 AI
S02時の間(武四郎・地図・絵巻)+アート生成実装 AI人(画像生成)
S03山道ライド・高風居の外観実装 AI
S04室内・時の転換実装 AI
S05五つの木片(触れる→光る→語る)実装 AI
S06問いと答え・帰還実装 AI
T01Quest 3 基盤(XR・ビルド)最優先・初日共同開発者(人)
T022 名同期・位置合わせ(手動 → 自動)共同開発者(人)
T033DGS が Quest で動くかの検証(go/no-go)人+AI
T04語り・音声パイプライン実装 AI
T05キャラクター(座り・鳥・同行者)
T06演出統合(10 分のタイムライン・操作盤)計画 AI が設計 → 実装 AI

この表から読み取ってほしいこと

  • 依存の要点を 1 行で書く: 「T01(XR 基盤)と T06(演出の契約)が最初。各シーンは PC 単体で動く状態から着手し、T01 が入り次第 Quest で確認」
  • 人が握った作業: 計画・仕様・レビュー・マージ・実機確認・go/no-go の判断。AI に渡したのは「完了条件が書けた実装」
  • それでも事故は起きた: 同じ Issue を 2 つのエージェントが同時に進めた → 「取ったら宣言する」規約を追加。規約は失敗から生まれる
対応する Issue の形 タイトル: S05 五つの木片/本文: 仕様書へのリンク・完了条件・チェックリスト(☐ 触れると光る ☐ 語りが始まる ☐ PC で再生 ☐ Quest で確認)/ラベル: ready(AI が取ってよい)
OHTA'S WAY — 実物

10 日間の日程(D0〜D7)— マイルストーンと「判断日」

夕方までの到達点 ◆誰が何を
8/29 D0◆ 計画・リポジトリ・仕様 12 本・Issues人+計画 AI
8/30 D1◆ 空のシーンが Quest で起動/全シーンの骨組みが PC で再生人: XR 基盤/AI: 骨組み生成
8/31 D23DGS go/no-go(判断日)/各シーンに実資産実装 AI ×6(PC 2 台で並列)
9/1 D3◆ 各シーンを Quest 実機で単体確認人: PR レビュー → マージ → 実機
9/2 D4◆ 10 分連結(統合 v1)/2 名同期/自動位置合わせ go/no-go人+AI
9/3–9/4◆ 通し試験 v1(1 名)→ v2(2 名)/運用手順書
9/5 D7正午フィーチャーフリーズ(以降はバグ修正のみ)/梱包
9/6–9/8現地設営・リハ → ◆ デモ
判断日(go/no-go)を先に決める「3DGS が重ければ 360 実写に切替」「自動位置合わせが間に合わなければ手動 2 点」——やめる条件と代替案を、着手前に書く。これはリスク管理(9/23)。
毎日のリズム朝: AI が前日の PR/Issue を要約 → 人が優先順位と割当を更新/日中: AI が自走/夕: 人がレビュー・マージ・実機確認。計画の更新(PRP)が毎日回る。
CASE

参考事例 — NO!トレ(9 か月の長期プロジェクト): フェーズ表と「合格の門」

期間主要作業担当
契約〜6月中旬キックオフ/シナリオ詳細協議/大学との連携協議企画会社+技術会社
6月中旬〜7月端末 3 台の調達・設定/方言対応の学習開始/教材本番版技術会社
7月内部テスト/マニュアル/スタッフ研修/商業施設との交渉企画+技術
8月〜12月県内 7 市で順次啓発活動(月 1〜2 市)企画会社
1月アンケート集計・分析/報告書企画会社
2月報告書提出(2/26)/教材の運用引継ぎ全員

マイルストーン: 6月末 α版/7月末 β版+研修/8月初旬 第1回啓発/12月末 全7市/2/26 納品。学生の案件とスケールは違うが、型は同じ

改善計画(9/14 版)の「合格の門」

直し合格の門=何ができたら完了か
配信スクリプトは検査 NG なら配信を止める〔機械〕わざと壊して止まることを確認
初期化した端末で最初のひと言が出る〔人〕端末 3 台 × 3 回=9 回で確認
方言対応を入れるかどうか〔判断日〕9/19 に go/no-go

版ごとの期日を引き直した(v1.1 9/17 → v1.2 9/22 → v1.3 9/25 → v2.0 9/28)。9/29–30 は予備日で、作業を入れない。「やらないと決めたもの 3 つ」も明記。

学生版への翻訳WBS の各行に「完了条件」を書く。〔機械〕で測れるか、〔人〕が見るしかないかも書く。
CASE

過年度の受講生が作った WBS(10 件・匿名化済み)

  • 卒論作成/目に優しい速読アプリ/卒業研究/カジュアルゲームアプリ/就活(For 内定)/公務員試験合格/TOEIC 800 点/学内新聞づくり/進路決定
  • それぞれに WBS 表+ガント+リスク管理シート。今日の実習の「ゴールの姿」です
  • 各事例に太田のコメント(良い点/足りない点)を付けてあります

https://icu-course.pages.dev/SWD/wbs-examples/(パスワードは授業で配布)

よくある「足りない点」(先に知っておく)

  • 「指導教員の返答待ち」「協力者募集」のような待ち時間が工数に入っていない
  • 「SPI 対策 90 人日」のように大きすぎる作業がそのまま(80 時間ルール)
  • 担当・進捗が空欄のまま——ひとりでも「自分」と書き、進捗を更新して初めて PRP ができる
  • テンプレの日付(2017 年)のまま——起点を自分の期日に合わせる
今日の WBS がこの 10 件より良くなる条件は 1 つ: 「誰が・何を見て・完了と言うか」が書いてあること。
CASE — 配布フォーマット

事例紹介 ① 配布している WBS フォーマットと、書き方のコツ

2022 年から配っている Google スプレッドシートのフォーマット(今日の提出テンプレの元)。列の構成そのものが「何を決めるべきか」のチェックリストになっている。

書くことねらい
WBS ナンバーA01・A02…/B01…(マイルストーンごとに記号を変える)依存関係と担当を、番号で指せるようにする
作業項目2 階層くらいで記入(レベル2 = マイルストーン/レベル3 = ワークパッケージ)深く掘りすぎない。7×7 ルール
工数(人日)人日=1 人が 1 日でできる作業量。人時でもよい「誰かが何時間やるか」を数字にする
必要人数/担当何人でやるか・誰がやるか同じ時間に同じ人を重ねていないか分かる
進捗% のほか「処理中/済」など状況でもよい0/50/100% で十分(80 時間ルール)
開始予定・終了予定
/開始実績・終了実績
上段が予定、下段に実績を入れる予定と実績を比べる=PRP の材料になる
日付欄(右側)1 日単位でも週単位でもよい。色を塗ってガントにする依存と待ち時間が目で見える
作る順番(このシートの指示どおり) やりたいことを考える → 達成したい目標 → マイルストーンを 4〜7 個 → 各マイルストーンに必要な項目 → ワークに落とす(全部で 30 個程度) → スケジュールに落とす
太田のコツ(シートに書いてあるもの) レイアウト: 列幅は小さく・セル結合/Alt+Enter で改行/色分けで進捗/日付は 10/10 形式
記入: 1 つのセルに 2 つの作業を入れない具体的に(「調べる」→「競合 5 件の価格を調べて表にする」)
CASE — 昨年度

事例紹介 ② 昨年度(2025)の受講生 28 名は、何をプロジェクトにしたか

同じフォーマットで、28 名がそれぞれ自分のプロジェクトの WBS を作りました。テーマの一部(本人が名前を付けていたもの):

テーマどんなプロジェクトか
Coin databaseコインのデータベースを作る。収集・分類・検索の仕組み
Enhancing musical perception through color mapping音楽の知覚を色で拡張する。研究とプロトタイプ
Multi-Modal BCI Game Interface with Adaptive Learning脳波などを使うゲーム操作インターフェース。研究テーマをそのまま計画に
AR スタンプラリー作成による卒業論文執筆制作と論文執筆を 1 つのプロジェクトとして並行管理
(ほか 24 名)卒論・就活・試験・アプリ制作・イベント運営など。テーマ名を付けずに提出した人も多い
この 4 つから分かること研究テーマそのものをプロジェクトにしてよい(卒論・ゼミの研究と兼ねられる)
制作と論文のように、2 つの締切があるものほど WBS が効く
③ 英語のテーマでも構わない(課題は日英どちらでも可)
提出のときに毎年ある失敗 共有設定を忘れる——URL を貼っても「閲覧可」にしていないと開けず、未提出扱いになる。昨年も全員分を個別に依頼し直しました。
提出したら、シークレットウィンドウで自分の URL を開いて確かめるのが確実です。

2020〜22 年度の 10 名分は、WBS・ガント・リスク管理シートの実物を受講生ページに置いています(学籍番号・氏名は削除済み)。

実習(17:30–19:20)
自分の計画を、AI と他者の力で実行可能にする

3 人組をつくって自己紹介 → 自分のプロジェクトを決める → まず自分の頭で分解する → AI に分解させる → 練習問題で「欠陥」を診断 → 自分の案を直す → 3 人で見直す → ガント → 提出(→ 授業後に再計画)

いきなり AI に聞かない。最初の 7 分は、紙とペンだけ。
自分が何を思いつき、何を思いつかなかったか——それが今日いちばんの収穫です。

実習 STEP 0 の前に

3 人組をつくって、自己紹介(1 人 2 分・計 6 分)

近くの人と 3 人組をつくってください(33 人=11 組)。この 3 人で今日ずっと動きます——練習問題の診断(Step 3)も、計画の見直し(Step 5)も同じ組で。

話すこと(1 人 2 分)

  1. 名前・メジャー・学年
  2. 何か開発をしたことがありますか?
    プログラミング・Web・ゲーム・動画・音楽・電子工作など。「ない」でも構いません
  3. 何かプロジェクトをやったことがありますか?
    学園祭・サークルの公演・イベント・部活の大会・研究・アルバイトの企画など。うまくいった/いかなかった話も
  4. AI を使って、どんなことをしていますか?
    レポート・翻訳・プログラミング・画像・相談相手。使っていない人は「使っていない」で OK
  5. 今日、自分のプロジェクトにしたいこと(まだ決まっていなければ候補でよい)
なぜ最初にやるか ① このあと 自分の計画を人に説明して、質問してもらう。相手のことを知らないと質問が出ない
経験も AI の使い方も人によって全然違う。得意な人に聞けるようになる
③ 最終回のワークショップは 3 人チームで制作。今日が最初の顔合わせ
聞く側のコツ 「へえ」で終わらせず、ひとつ質問する
「それは何人でやったの?」「いちばん大変だったところは?」「AI に任せてみて、うまくいかなかったことは?」

時間が余ったら、4 の「AI の使い方」を掘ってください。今日の実習で、その差がそのまま出ます。

PRACTICE

実習の全体像(110 分・途中で 10 分休憩)

配分Stepやること残すもの
6 分3 人組をつくって自己紹介(開発経験・プロジェクト経験・AI の使い方・今日のテーマ候補)今日ずっと動く 3 人組
8 分0目的・対象者・成果物・範囲外・期限・使える時間・最初の 1 週間の最小の一歩(MVP)を 1 枚に書く前提と完了条件
7 分1まず自分の頭で分解する(紙・AI なし)。思いつく作業を全部書き、個数を数える。書き切れなくてよい自分の初稿
10 分2同じ前提を Claude(または Gemini)に渡し、WBS の初稿(プロンプト①②)。手案はまだ渡さないAI 初稿と入力文
10 分3配布の「欠陥入り練習 WBS」を 3 人で診断(5 つの問い)不足・矛盾と影響
10 分休憩
15 分4手案と AI 案を比べて修正。「手案だけ/AI だけ/両方にない」を各 3 つ記録。100%・粒度・依存・担当の根拠をチェック修正版
15 分53 人組で相互レビュー(1 人 5 分)指摘メモ
20 分6主要 8〜10 作業に依存・担当・工数・待ち時間を入れ、プロンプト③で Mermaid gantt → mermaid.live で描画ガント
10 分7Google スプレッドシート(テンプレ)に貼って提出提出
課題8条件を変えて再計画する(PRP)——授業後に自分でやる。次回 9/23 と課題1 で使う延期・削減・並行化した内容

Claude が止まったら Gemini に同じ文を貼る。両方止まったら配布の「保存済み AI 初稿」で Step4 から続ける。AI を使うこと自体は必須ではない。

HANDOUT — 配布(1 枚)

手順書:自分のプロジェクトの WBS を作る

はじめに(6 分)3 人組をつくって自己紹介
名前・メジャー・学年/開発をしたことがあるか/プロジェクトをやったことがあるか/AI をどう使っているか/今日のテーマ候補。この 3 人で今日ずっと動きます。

Step 0(8 分)前提を 1 枚に書く
目的/対象者(誰のため)/成果物/範囲外(やらないこと)/期限/使える時間(週 h)/最初の 1 週間の最小の一歩。WBS が 30 個は出そうな題材を。

Step 1(7 分)まず自分の頭で分解する(AI なし・紙)
思いつく作業を全部書く。数を数える。書き切れなくてよい。ここを飛ばすと、今日の実習は意味がなくなります。

Step 2(10 分)AI に初稿を作らせる
claude.ai を開く → プロンプト①(質問に答える)→ プロンプト②(WBS の表)。手案はまだ渡さない。出力はコピーして保存。

Step 3(10 分)練習問題を 3 人で診断
配布「欠陥入り練習 WBS」に 5 つの問いを当てる。答えは後で開く。

Step 4(15 分)比べて直す
手案だけにあった/AI だけにあった/両方になかった作業を各 3 つメモ。チェック: 100%(管理・レビュー・待ち時間が入っているか)/粒度(0.5〜8h)/先行 ID が循環しない/「AI 支援」の行にも人の責任者。

Step 5(15 分)3 人で相互レビュー
1 人 5 分。自分の計画を説明 → 他の 2 人が質問「無理はないか」「足りないものは」「AI に任せすぎでは」。

Step 6(20 分)ガント
主要 8〜10 作業に依存・担当・工数・待ち時間 → プロンプト③ → 出た Mermaid を mermaid.live(登録不要)に貼る → PNG 保存(任意)。

Step 7(10 分)提出
WBS テンプレ(Google スプレッドシート)をコピーし、1 枚目に表、2 枚目に Mermaid テキスト、3 枚目に手分解メモ+差分。「リンクを知っている全員が閲覧可」にして、共有シートの自分の行に URL を貼る
提出先スプレッドシート

Step 8(課題・授業後)条件を変えて再計画する
「協力者の返答が 3 日遅れる」「使える時間が週 2 時間減る」。何を延期・削減・並行化したか、重要な変更を 3 つ書く。最初の一歩(MVP)は守る。次回 9/23 と課題1 で使います。

困ったときClaude 上限 → Gemini に同じ文を貼る/両方ダメ → 配布「保存済み AI 初稿」で Step 4 へ/ネットが不安定 → 紙で Step 4〜7 をやり、後日入力。
PROMPT ①

プロンプト① — 前提を対話で詰める(Step 2 の前半)

あなたは経験豊富なプロジェクトマネージャーです。私のプロジェクトを、WBS(作業分解)にできるまで具体化してください。

プロジェクト: 「(1行で)」
期限: 「」 成果物: 「」 対象者(誰のため): 「」
使える時間: 「週 ○ 時間」 範囲外(やらないこと): 「」
最初の1週間の最小の一歩: 「」

足りない情報があれば、5 問以内で一つずつ質問してください。
私が全部答えたら、「目的/対象者/成果物/期限/制約(時間・お金・スキル)/範囲外/最初の一歩」を 10 行以内でまとめてください。
分からないことは推測せず、「未確認」と書いてください。

ポイント: AI に質問させるのが今風。自分でも気づいていない前提(誰が承認するのか、いつまでに何を見せるのか)が出てくる。一畳敷の「キックオフ質問 12 問」と同じ発想。

PROMPT ②

プロンプト② — WBS の初稿(Step 2 の後半)

上のまとめをもとに、WBS を作ってください。条件:
- レベル1=フェーズ(「プロジェクト管理」を必ず含める)、レベル2=成果物、レベル3=作業。合計 30〜50 件
- 各行に: ID、親ID、成果物/作業、完了条件(何ができたら終わりか)、担当する人、AI が支援できる部分、確認者、人の工数(時間)、待ち時間(日)、先行ID
- 最下位の作業は 8 時間以内。AI が支援する行は「生成 ○h + 人の検証 ○h」に分ける
- 返答待ち・納品待ち・審査などの「待ち時間」は、作業とは別の行にする
- 出力は Markdown の表。最後に「見落としやすい作業」を 5 つと、「仮定したこと」「未確認のこと」を箇条書きで
AI の WBS にありがちな穴(Step 4 で探す)レビュー・利用者確認がない/承認や交渉がない/待ち時間が 0/粒度が不均一/依存を無視して同じ人に同時刻の作業/「AI がやる」行に人の責任者がいない
禁止事項個人情報・他人の名前・機密をプロンプトに入れない(「指導教員」「協力者 A」でよい)。
TOOL

Mermaid とは — 文字で書くと図になる記法(無料・登録不要)

  • Mermaid = テキストで図を書くためのオープンソースの記法。フローチャート・ガントチャート・シーケンス図などが書ける
  • AI はこの記法を知っているので、「Mermaid の gantt で」と頼めば図をテキストで出してくれる。画像を作らせるより速くて、無料枠でも止まらない
  • 描画は mermaid.live(ブラウザ・登録不要)に貼るだけ。PNG/SVG で保存できる
  • 同じテキストを GitHub の Markdown や Notion に貼っても図になる。テキストなので直しやすく、提出・共有しやすい
意味
ganttガントチャートを描く宣言
dateFormat YYYY-MM-DD日付の書き方
section 研究計画見出し(WBS のレベル 1)
章立て1枚 :a1, 2026-09-17, 3d作業名 : ID, 開始日, 日数
教員確認(待ち) :a2, after a1, 6dafter=先行タスクの後に始める(依存関係)
提出 :milestone, m1, 2026-12-15, 0dマイルストーン(◆)
gantt
  title 卒業論文(例)
  dateFormat YYYY-MM-DD
  section 研究計画
  章立て1枚          :a1, 2026-09-17, 3d
  教員確認(待ち)    :a2, after a1, 6d
  先行研究15本       :a3, after a1, 14d
  section 執筆
  第1〜2章           :b1, after a3, 18d
  section 提出
  提出               :milestone, m1, 2026-12-15, 0d

↑ これをそのまま mermaid.live に貼ると、下のような横棒の図になる。

研究計画9月10月11月12月
章立て1枚
教員確認(待ち)
先行研究15本
第1〜2章
提出
PROMPT ③

プロンプト③ — Mermaid gantt に変換(Step 6)

上の WBS のうち主要な作業 8〜10 件を、Mermaid の gantt に変換してください。
- dateFormat YYYY-MM-DD、開始日 2026-09-17、期限 「」
- section=レベル1、タスク=作業。先行タスクは after を使う
- 待ち時間は別タスクにし、名前の末尾に(待ち)と書く
- マイルストーンを 3 つ(milestone): 最初の一歩、中間、提出
- コードブロックだけを出力してください
gantt
  title 卒業論文(例)
  dateFormat YYYY-MM-DD
  section 研究計画
  章立て1枚          :a1, 2026-09-17, 3d
  教員確認(待ち)    :a2, after a1, 6d
  先行研究15本       :a3, after a1, 14d
  section 執筆
  第1〜2章           :b1, after a3, 18d
  提出               :milestone, m1, 2026-12-15, 0d

出てきたコードを mermaid.live に貼ると図になる(登録不要)。PNG/SVG で保存できる。同じテキストは GitHub や Notion にも貼れる。

描画が成功しても計画が正しいとは限らない。WBS=何を揃えるか/依存=どの順か/ガント=いつ、の 3 つを区別する。ガントは今日の提出物では任意。

STEP 4

Step 4 — 手案と AI 案を比べて、自分の計画に直す(15 分)

記録する(3 枚目のシートへ)

  • 手案だけにあった作業(AI が見落とした。たいてい、あなたしか知らない事情)× 3
  • AI 案だけにあった作業(自分が見落とした。たいてい、管理・確認・待ち)× 3
  • 両方になくて足した作業 × 3

この「差分」が今日の評価対象。AI の表をそのまま出しても点にならない。

チェックリスト

観点問い
100%プロジェクト管理・レビュー・待ち時間・片付けが入っているか。範囲外が混ざっていないか
粒度1 行が 0.5〜8h か。「開発 40h」は分割。「メール 5 分」は親に吸収
依存先行 ID が循環していないか。「すべて」は依存を書いていないのと同じ
担当「AI 支援」の行にも人の責任者。AI に任せる根拠は「完了条件が明確・定型・低リスク」か
時間「依頼文を書く 30 分」と「返答を待つ 3 日」を分けたか
一歩最初の 1 週間の最小の一歩が、表の最初の方にあるか
STEP 7

Step 7 — 提出(10 分)と、今日の評価の見方

提出物(Google スプレッドシート 1 本)

  1. 1 枚目「WBS」: テンプレの列(ID・親ID・成果物/作業・完了条件・担当する人・AI 支援内容・確認者・人の工数・待ち時間・先行ID・開始・終了)
  2. 2 枚目「Mermaid」: プロンプト③の出力テキスト(図の PNG は任意)
  3. 3 枚目「手分解メモ」: Step 1 の写真かメモ、Step 4 の差分 3+3+3、Step 7 の変更 3 件
提出先(共有スプレッドシート) docs.google.com/spreadsheets/d/1kbV29tDhY94VxteGnGc6owFN-YeZ0enoVvnZjyb4pJE
手順: ① 上のシートを開く(ICU の Google アカウントで) ② テンプレのシートを自分のドライブにコピー(ファイル › コピーを作成) ③ 自分の WBS を書く ④ 「リンクを知っている全員が閲覧可」に設定 ⑤ 共有シートの自分の行に、氏名・学籍番号・URL を貼る

学籍番号の行が無い人は、いちばん下に追加してください。URL が開けない設定のままだと「未提出」になります。

今日の提出で見るところ(課題1 の土台)

観点見る
100% ルール管理・レビュー・検証・待ち時間が入っているか
粒度・依存0.5〜8h、循環なし、クリティカルパスが言えるか
人/AI の分担AI に任せる根拠。人の責任者がいるか
検証の記録差分 3+3+3 と、再計画の変更 3 件が書いてあるか
行数の多さ、AI の使用量、図の美しさは評価しない。「自分で判断した跡」を評価する。
課題(授業後)

Step 8【課題】条件を変えて再計画する(PRP の初体験)

この Step は授業では行いません。提出したあと、次回 9/23 までに自分でやってください(課題1 の一部)。

条件変更(どちらか、または両方)

  • 協力者(教員・依頼先・仲間)の返答が 3 日遅れる
  • 使える時間が 週 2 時間減る

やること

  1. クリティカルパス上の作業に印をつける
  2. 何を延期削減並行化するか決める。最初の一歩(MVP)は守る
  3. 重要な変更 3 件と理由を 3 枚目のシートに書く(提出済みのシートに追記してよい)
これが PRP計画は「立てて終わり」ではなく、条件が変わるたびに引き直すもの。 一畳敷では毎朝、NO!トレでは版ごとに引き直した。みなさんは週 1 回、実績を入れて引き直す——次回 9/23 からその習慣を始める。
次回 9/23 につながる次回はリスク管理。「協力者の返答が遅れる」のような起こりうることを洗い出して、対策を計画に組み込みます。今日の再計画はその予行演習です。

AI の使い方: 変更した条件を貼って「影響を受ける行と、延期・削減・並行化の案を出して」と頼んでよい。ただし何を削るかは自分で決める

NEXT

次回まで(授業外学習 225 分の目安)と課題1

次回 9/23(水・祝日ですが授業あり): リスク管理

  • WBS の見直し(60 分): 今日の WBS を 1 人で読み直し、「想定していなかった作業」を 3 つ足す。実績(今週やったこと)を入れる
  • 環境(未了の人・15 分): claude.ai の無料登録と gemini.google.com を使える状態に。Claude は Settings › Capabilities で「Code execution and file creation」を ON
  • 予習(30 分): 自分の WBS を見ながら「うまくいかないとしたら何が原因か」を 5 つ書き出す → 次回のリスク登録票の材料
  • 次回は、今日の WBS にリスク登録票を足し、計画を引き直します。今日のスプレッドシートをそのまま使うので消さないこと
課題1「プロジェクト計画書」— 出題: 今日 / 締切: 10/7(水)24:00(9/23 の 2 週間後)・Moodle
  1. 前提(Step 0 の 1 枚・最初の一歩を含む)
  2. WBS(担当=人/AI 支援/確認者、完了条件、待ち時間つき)
  3. ガント(Mermaid テキストか、スプレッドシートの日付列)
  4. リスク登録票(9/23 の授業で作る)と、それを反映した計画の修正
  5. 「最初の一歩」を実際にやった記録(写真・メール・1 枚など、やった証拠)
  6. AI 利用ログ: どこで AI を使い、どこを自分で直したか(差分 3+3+3)
形式: 今日と同じスプレッドシート 1 本にまとめる(新しく作らず、今日提出したものを育てる)。シート名は「WBS/Mermaid/手分解メモ/リスク登録票/最初の一歩」。別途 PDF などは不要。日英どちらでも。

今日の提出(Step 8)→ 9/23 でリスクを足す → 10/7 までに提出、の 3 段階。今日の分だけで完成させなくてよい。

COMMENT SHEET

コメントシート(19:20–19:30・授業時間内に Moodle へ)

  1. 自己紹介: メジャー・学年/プログラミング経験(なし・少し・ある)/AI をどう使っているか
  2. つくりたいもの・プロジェクトにしたいもの(1 つ以上。なぜそれか。今日の実習で選んだものと違ってもよい)
  3. 今日、AI が見落としたこと/自分が直したことを 1 つずつ
  4. 質問・要望(次回答えます)
共有したくない部分は //共有なし 文章 // で囲んでください。コメントは次回シェアし、質問には次回答えます。
欠席した人は「欠席レポート」(A4 2 枚・9/23 24:00 まで・Moodle の別提出先)。今日の実習の WBS を添えてください。

出席は Moodle の出席機能でも登録してください(コメントシートとは別)。

SUMMARY

まとめ — 今日の 7 つ

今日やったこと持ち帰ってほしいこと
1この授業の位置づけ題材はソフトウェアだが、学ぶのは「つくりたいものを、他の人と協力して実現する」方法論。卒論・就活・学園祭・事業でも手順は同じ
2「プログラミングは2割」残り 8 割は、何を・誰のために・どう作り、どう確かめ、どう届けるか。AI で実装が速くなった分、確かめる仕事と決める仕事が増えた(DORA・Stack Overflow・Veracode)
3まず自分の頭で分解したAI に聞く前に自分で考える。自分にしか書けない作業(自分の事情・関係者・締切)と、自分が忘れがちな作業(管理・レビュー・待ち時間)の両方が見えた
4WBS の 3 つのルール100%(漏れなく・重複なく。管理とレビューも入れる)/粒度(次の確認までに完了を判定できる単位)/7×7(人が扱える広さ・深さ)
5順序と時間を入れた依存関係・クリティカルパス・待ち時間(作業 0 時間でも日数はかかる)。AI で速くできるのは自分の手番だけ
6AI に分解させて、自分で直したAI は初稿・質問・変換の相棒。判断と責任は自分。「AI 支援」の行にも人の確認者を置く。見積りは「生成 + 検証」
7条件を変えて引き直した(PRP)計画は「立てて終わり」ではない。条件が変わるたびに引き直す。削るときも最初の一歩(MVP)は守る
今日の問い(持ち帰ってください)自分の計画のうち、自分にしか決められないことは何か。 AI が分解し、あなたが判断し、仲間が確かめる——この 3 つを、これから 8 週間くり返します。

次回 9/23(水・祝日ですが授業あり): リスク管理 — 今日の WBS に「うまくいかない条件」と対策を書き込みます。今日のスプレッドシートを使うので消さないこと。
宿題: ①WBS を見直して作業を 3 つ足す ②「うまくいかないとしたら何が原因か」を 5 つ書き出す ③環境(claude.ai・gemini.google.com)。課題1 の締切は 10/7 24:00(リスク登録票と「最初の一歩をやった記録」を含む)。