ガイダンス + 作業分解(WBS)
— つくりたいものを、実現する方法論
担当: 太田啓路 ohtak@icu.ac.jp
今日のゴールと流れ(15:25–19:30)
先週 9/9 は出張(VR学会)のため休講にしました。ご迷惑をおかけしました。今日はその分、ガイダンス+作業分解を続けてやります。
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 5限 15:25–16:40 | ガイダンス — この授業は何を学ぶか/私がいま作っているもの/スケジュール・評価・ルール/使う AI と無料の範囲/名言集/まずやってみる(MVP) |
| 6限 16:50–17:30 | 作業分解の講義 — プロジェクトとは/WBS の3ルール/ガント・PRP/太田の事例:AI で WBS を作る/参考事例 |
| 6限後半〜7限 17:30–19:20 | 実習 — 自分のプロジェクトを決め、手で分解 → AI に分解させ → 自分で検証 → ガント → 3人で見直し → 再計画 → 提出 |
| 19:20–19:30 | コメントシート(授業時間内に Moodle へ) |
自己紹介 ① 研究者として
- 太田 啓路(おおた けいじ)/ 情報科学メジャー シニアレクチャラー。担当: 情報科学概論・コンピュータゲーム・映像情報メディア技術基礎・ソフトウェア開発・インタラクティブコンテンツ制作 など
- 博士(国際情報通信学) — 早稲田大学 国際情報通信研究科 修了
- 博士論文: 「安全かつ快適な3次元映像表現に関する人間工学的研究」
- 研究テーマ: 3D ゲームにおける映像酔い(SEGA 共同研究)、立体映像のインタラクティブ応用、文化財の LBVR(ロケーション型 VR)
- 一貫した問い: 「その映像は、人の身体にとって安全で快適か」
自己紹介 ② 映像・VR の会社をやっています
株式会社リ・インベンション(2013年設立/前身 QXD は 2008年〜)代表。秋葉原 UDX の 3D シアター・3D スタジオ担当(2006年〜)が出発点。
| VR ライブ | HMD を 40〜100 台同時制御する没入型ライブ |
|---|---|
| 8K VR 撮影 | ライブ・舞台・文化財の 360°/180° 3D 制作 |
| 2D→3D 変換 | 映画・シアター・プロモーション映像の立体化 |
| 生成 AI × 映像制作 | AI の生成力とプロの審美眼を組み合わせる |
| 3D スキャン | フォトグラメトリ・Gaussian Splatting |
| 映像表示システム開発 | ドームシアター・多面スクリーン・同期上映 |
仕事の大半は「コードを書く」ではなく、企画・見積・計画・調整・検証・納品。だからこの授業を担当しています。
自己紹介 ③ これまでの仕事から

北欧初の 3D 映画

全編 2D→3D

新体感ライブ 8K VR

8K3D ドームシアター

祭り 360°3D シアター
| 2010 | 『Moomins and the Comet Chase(ムーミン谷の彗星)』北欧初の 3D 映画制作 |
| 2014 | 映画『STAND BY ME ドラえもん』全編 2D→3D 変換 |
| 2016 | 『ONE PIECE FILM GOLD』一部 2D→3D 変換 / 生中継 180°3D VR |
| 2018 | 8K VR 撮影(アイドルライブ)/ 青い森ホール「3D 青森祭りの魂」360°3D シアター |
| 2020–21 | NTT ドコモ「新体感ライブ CONNECT」 8K VR 制作 |
| 2024 | NHK 超体験フェス リアルタイム映像表示システム / NHK 8K3D ワンダービジョン |
| 2025 | 神席 ExWarp VR LIVE(渋谷 FOWS)— ルミエール・ジャパン・アワード VR 部門 特別賞 |
| 2026 | 3D VR 撮影 / 相馬野馬追 VR / 生成 AI プロモーション / 学内文化財の LBVR(次ページ) |
空飛ぶ一畳敷 — 学内文化財「泰山荘・一畳敷」のロケーション型 VR(LBVR)



- 松浦武四郎(「北海道」の名付け親・1818–1888)が 1886 年に建てた畳一枚の書斎。全国の古社寺の古材 90 点。1930 年代に三鷹へ移築、1999 年 国の登録有形文化財。このキャンパスの泰山荘に現存
- 表門・一畳敷・敷地を 3DGS で再構築し、Meta Quest 3 を 2 人同時に LAN で同期。畳の上に座って体験する「空飛ぶ畳」の演出、武四郎が語り部
- 先週 日本バーチャルリアリティ学会 第31回大会(VRSJ 2026・富山)で発表・デモ → 10 月 泰山荘特別公開 → 11 月 一般公開予定(湯浅八郎記念館と連携)
ダッシュボード URL: https://ri-projects.pages.dev/soratobu/
その「分解の仕方」を、6限で実物として見せます。
論文の共著: 学内の共同研究者・会社の共同開発者・湯浅八郎記念館。文化財の撮影許可と権利確認も「作業」の一部でした。
NO!トレ — 消費者トラブルを疑似体験する AI 教材(青森県の消費者教育事業)



- 詐欺の電話・勧誘を AI が相手役になって再現し、「見抜く力・断る勇気」を体験で学ぶスマホ/タブレット教材。体験の最後は消費者ホットライン 188 へ
- 県内 7 市の商業施設を巡回して啓発活動。契約から翌年 2 月末までの長期プロジェクト(企画会社+技術会社+県の連携)。私の会社は AI 教材の設計・開発・端末運用を担当
- いまは「県の指摘 7 件を 9/28 までに直す」改善計画の真っ最中。方言(津軽弁)対応の go/no-go を 9/19 に判断
フェーズ表と「合格の門」(何ができたら完了か)の書き方を、参考事例で見せます。
※ 授業で使うのはブラウザの Claude と Gemini だけです。
真葛焼 プロジェクションマッピング — 実物の花瓶に映像を投影する
- 宮川香山 眞葛ミュージアム(横浜)の代表作「崖ニ鷹大花瓶」を 3D プリントした原寸大の花瓶に、映像を投影する常設展示
- 約 2 分・60fps・縦 4K(プロジェクタを 90°回転)。演出家の絵コンテに基づく 23 カット
- 制作完了は今月末、展示は 10 月 3 日(土)から。いまが追い込み
- 工程: Blender で 3D の奥行き・マスクを出す → 画像生成 AI でキーフレーム → 花瓶だけは実物を固定座標に合成(AI に描かせない) → 動画化 → 4K 拡大 → 組み立て → 現場でマッピング
作業の一覧を 1 か所に持つと、計画の変更に強くなる——これが今日の WBS の効き目です。後で分解の例も見せます。
この授業は「何かを実現するための方法論」を学ぶ授業
身につけるのは「つくりたいものを、他の人と協力して実現する」ための手順。
この授業で扱うこと
- 目的を決め、作業に分解し、計画を立てる(PM・WBS・ガント)
- 失敗に備える(リスク管理)/小さく始めて確かめる(MVP・KPI)
- 使う人の目で見る(UX/UI)/正しく動くか確かめる(テスト)
- 何を作るかを言葉と図で決める(仕様・モデリング)
- チームで作り、発表し、フィードバックで直す(WS・評価)
過年度の受講生の「プロジェクト」
卒論の執筆/就活(For 内定)/公務員試験合格/TOEIC 800 点/学内新聞づくり/カフェ開発/ICU スケジュールアプリ/速読アプリ/Unreal Engine のゲーム/進路決定
今日の実習でも、自分が本当に実現したいことを題材にしてください。
ソフトウェア開発の流れ — 「プログラミングは2割」
営業 → ニーズのヒアリング → 企画提案(見積) → 契約 → 要件定義 → 設計 → プログラム開発 → バグ修正 → テスト → 運用テスト → 納品 → 保守(+マニュアル作成・使い方の指導)
| フェーズ | 主な作業 | 典型的な失敗 |
|---|---|---|
| 要件定義 | 関係者への聞き取り・整理 | 「作ったけど使われない」 |
| 設計・計画 | 構造の選択・作業分解・日程 | 「後から直せない」「終わらない」 |
| 実装 | コードを書く(← ここが2割。AI が最も得意) | バグ・技術的負債 |
| テスト | 動作・品質・安全性の確認 | スキップして後から炎上 |
| 運用 | 監視・障害対応・機能追加 | 「誰も全体を知らない」 |
AI で実装が速くなった分、「何を作るか」「正しいか」「誰が責任を持つか」の重みが増した——これは断定ではなく、今日のデータで一緒に確かめます。
スケジュール(9/16〜11/4・毎週水曜 5-6-7限・I-212)
| 日付 | テーマ | 実習(6限後半+7限) | 課題 |
|---|---|---|---|
| 9/16 | ガイダンス+作業分解(WBS) | 自分のプロジェクトの WBS を AI と作り、検証する | 課題1 出題 |
| 9/23 祝日だが実施 | リスク管理 | 自分の WBS にリスク登録票・プランB → 計画を直す | |
| 9/30 | MVP・KGI/KPI・再計画 — 小さく素早く始める | 自分のプロジェクトの MVP と KPI ツリー | 課題2 出題 |
| 10/7 | UX/UI | 紙スケッチ → AI で画面案 → 相互批評 | 課題1 締切 10/7 |
| 10/14 | テスト・デバッグ | 受入条件を書き、AI が作ったテストをレビュー | 課題2 締切 10/13 |
| 10/21 | モデリング(仕様=完成の条件)+チーム結成 | 3人チームで課題→CANVAS→仕様 v0 | WS 準備 |
| 10/28 | ワークショップ:制作・発表 | 3限まるごと制作、最後に発表(1チーム6分) | 課題3 出題 |
| 11/4 | 成果物の評価・フィードバック | 相互試用 → 改善 → 再検証 | 最終レポート 締切 11/18 |
日程は変わることがあります。確定版は毎回、授業内と受講生ページで案内します。
評価と課題
| 区分 | 割合 | 中身 |
|---|---|---|
| 出席 | 50% | 毎回の Moodle 出席+コメントシート(欠席レポートの扱いは次ページ) |
| 課題 | 50% | 課題1 計画書(15%)/課題2 MVP・KPI・受入条件(15%)/課題3 WS 成果物(8%)+最終レポート(12%) |
| 課題 | 出題 | 提出物 | 見るところ |
|---|---|---|---|
| 課題1 | 今日(9/16)→ 10/7 締切 | 自分のプロジェクトの計画書: WBS+ガント+リスク登録票(9/23)+最初の一歩の記録(担当=人/AI の列つき) | 100% ルール・依存・人と AI の分担の根拠・検証の記録 |
| 課題2 | 9/30 → 10/13 締切 | MVP 定義+KPI ツリー+受入条件 2 本 | 小さく始める設計・測り方 |
| 課題3 | 10/28 → 11/4 | チーム制作物+仕様+AI/人間の分担+検証ログ | 仕様どおりか・検証したか |
| 最終レポート | 11/4 → 11/18 締切 | A4 2枚: 初期計画 → 受けたフィードバック → 採否の理由 → 直した結果 → 卒論・就活への応用 | 判断と証拠。改善量ではない |
テスト・期末試験はなし。授業外学習の目安は週 225 分。課題は日本語・英語どちらでも可。
受講のルール — 出席・コメントシート・欠席レポート
出席とコメントシート
- 出席は Moodle の出席機能で、授業時間内に各自登録
- コメントシートは毎回、授業時間内に Moodle へ(19:20 に時間を取ります)。やむを得ず退出する場合は当日 24:00 まで
- 「授業を受けたことが分かる」内容を書く。コメントは次回シェアし、質問には次回答えます
- 共有したくない部分は
//共有なし 文章 //で囲む
今日のコメントシート(初回)
- 自己紹介(メジャー・学年・プログラミング/AI の経験)
- つくりたいもの・プロジェクトにしたいもの(1つ以上。なぜそれか)
- 今日、AI が見落としたこと/自分が直したこと
- 質問・要望
欠席した場合(欠席レポート)
資料(この HTML+補講ビデオ)を読んで欠席レポートを出すと、その回の出席点の8割で出席扱い。忌引き・教育実習はレポートを出せば10割。
| 分量 | 締切 | 提出先 |
|---|---|---|
| A4 2枚(3コマ分) | 授業日の1週間後 24:00 | Moodle「欠席レポート」(コメントシートと別) |
書くこと: ①日付 ②要点の要約(自分の言葉で) ③印象に残った事例・名言と理由 ④自分のプロジェクトへの適用 ⑤質問 +その回の実習の成果物(今日なら WBS)
使う AI は2つ、どちらも無料 — 「無料はどこまで?」
| サービス | 無料でできること(2026-09-16 確認) | 上限・注意 |
|---|---|---|
| Claude claude.ai | チャット・コード生成・表や図の生成(Artifacts)・Projects 5 個まで・ファイル添付(PDF/xlsx など)。モデルは Sonnet/Haiku | 5 時間ごとにリセットされる回数上限(数は非公表)。Artifacts を使うには Settings › Capabilities › 「Code execution and file creation」を ON |
| Gemini gemini.google.com | チャット・Canvas(文書/コードの横並び編集)・画像生成・Deep Research | 5 時間ごと+週の上限。添付は 32k トークンまで。混雑時に一部機能が使えないことあり |
| ChatGPT (参考) | 文章・表・Mermaid のテキストは無料で出せる。データ分析(Python 実行)・画像生成・Canvas は無料でも使えるが別枠の上限 | ガントを「画像」や「xlsx」で出させると、途中で止まる人が出る。今日は使わない |
② 成果物は Markdown の表と Mermaid のテキストに固定 — どのサービスでも無料で出せる形
③ 両方止まったら、配布の「保存済み AI 初稿」で続ける。AI を使うこと自体は必須ではない
Copilot・Cursor・Claude Code などは「世の中にはこういう道具もある」と紹介はしますが、提出物の前提にはしません。
上の表は公式ヘルプで確認した範囲。数値は変わるので、迷ったら各社の料金ページを見てください。
AI 利用の約束(シラバス §13)
- 提出物は、自分で説明できるように理解する努力をする(分からない部分は調べる・AI に聞き直す・人に聞く)
- AI に任せた部分と、自分が判断した部分を提出時に明示する
- AI 生成物は出発点。レビュー・検証・改善は提出者の責任
- 個人情報・機密・第三者の著作物をプロンプトに入れない
伝説的な開発者の言葉 ①(出典が確かなものだけ)
伝説的な開発者の言葉 ②
残り(Brooks「銀の弾丸はない」/Hoare/Fowler/Torvalds/Beck ほか)は、各回の冒頭で1つずつ。受講生ページに一覧を置きます。
AI 時代の一枚 — 使う人は増えた。「信頼」「安全」は伸びていない
以下はいずれも公開されている調査レポートです(発行元・対象・時期を併記)。数字は各社の発表値。原文リンクは次ページ。
| 調査(発行元・種類) | 対象・時期 | 分かったこと |
|---|---|---|
| DORA 2025「State of AI-assisted Software Development」 Google Cloud の研究チーム DORA(DevOps Research and Assessment)が毎年出す業界調査。開発組織の生産性研究として最も引用される | 世界の技術者 約 5,000 人への調査(2025年6〜7月)+100 時間超の聞き取り。2025-09-24 公開 | 開発者の 90% が仕事で AI を利用(前年比 +14pt)。AI は「増幅器」——チームの強みも弱みも増幅する。作業の速さ(スループット)は上がったが、リリース後の安定性は下がる傾向が続く。30% は AI が書いたコードを「ほとんど/全く信頼していない」 |
| Stack Overflow Developer Survey 2025 開発者 Q&A サイト Stack Overflow の年次アンケート。世界最大級の開発者調査 | 177 か国 49,000 人超の開発者(2025年) | AI ツールの利用は 84%。だが出力を「正確だと信頼」は 29%、「高く信頼」は 3%。66% が「惜しいが、ピッタリではない(almost right, but not quite)」と回答。45% が AI コードのデバッグに時間を取られる |
| Veracode「2026 GenAI Code Security Report」 アプリケーション・セキュリティ企業 Veracode の年次レポート | 100 超の AI モデルに同じコーディング課題を解かせ、セキュリティ検査にかけた(2026-07 公開) | AI が書いたコードのセキュリティ合格率は平均 56%——4 年間ほぼ横ばい。モデルが賢くなっても「安全なコード」は増えていない。XSS(クロスサイトスクリプティング)対策の合格率は 15% |
| DORA 2026「ROI of AI-Assisted Software Development」 同じ DORA チームの追加レポート(2026-04)。※本資料は InfoQ の要約記事経由 | 導入企業のコスト・効果分析 | 導入初年度は J カーブ——検証とワークフローの適応で、一時的に生産性が下がってから上がる |
| Faros AI / LinearB(2026) 開発分析ツール企業の利用データ集計。※二次情報・参考値 | 各社の顧客データ(数万人規模) | AI が手伝った変更提案(PR)はサイズ約 2.5 倍・レビュー待ち約 5 倍。コードレビューに使う時間が大きく増加 |
AI 時代の一枚 — 原文リンクと、授業での読み方
原文(すべて無料で読める)
確認日 2026-09-16。DORA 2026 と Faros/LinearB は原典 PDF を直接確認しておらず、数値は「傾向」として扱ってください。
3 つの調査に共通するパターン
- 使う人は増えている(90%・84%)
- 速くはなる(DORA: スループット向上)
- だが信頼・安定性・安全性は伸びていない(信頼 3%、安定性は低下、安全合格 56% 横ばい)
注意: 調査はいずれも「回答者の自己申告」か「特定ツールの利用データ」。AI の効果は課題や使い方で大きく変わるので、「AI で必ず速くなる」とも「危ないから使うな」とも言えない。
まずやってみる — 小さく、素早く始める(MVP)
MVP(Minimum Viable Product)=仮説を確かめるための、最小の試作品。Eric Ries『リーン・スタートアップ』(2011)。
- Zappos(靴の EC): 在庫を持たず、靴屋で撮った写真だけを載せて「売れるか」を確かめた
- Dropbox: 製品の前に 3 分の説明動画を公開し、登録待ちが一晩で 5 千→7.5 万人
- Facebook: 1 つの大学だけで始めた
私が事業計画を書くとき何度も参考にした本が『起業の科学』(田所雅之)。「作り込む前に、欲しがる人がいるか確かめろ」。
「最初の一歩」を決めて、走り出すための道具。 実習の最初に「最初の 1 週間でやる最小の一歩」を 1 行書いてもらいます。
卒論なら「章立て 1 枚を先生に見せる」。アプリなら「画面 1 枚を紙に描いて友達に見せる」。
休憩中に考えておくこと: 「自分のプロジェクトにするなら、何か」(1 行)。
Hopper の「許可より許し」も同じ精神。ただし練習問題で見るように、承認が要る作業を飛ばすのとは違う。
プロジェクトとは — 「開始と終了があり、成果物・期限・制約がある仕事」
| 定義 | 開始と終了のある一連の作業。時間・資源・目標によって制約され、具体的な成果物・期限・予算がある。予算で投入できる資源(人・モノ・カネ)が決まる |
|---|---|
| 定常業務との違い | プロジェクトには明確な目標と開始・終了がある/定常業務(経理・人事・サポート…)は何度も繰り返す/プロジェクトには目的を達成するための組織(チーム)ができる |
| マネージャーの課題 | 時間・コスト・品質のバランスを取り、円滑に進める。不意打ちは日常茶飯事——「曖昧さへの耐性」「変更管理の能力」「顧客第一の思考」が要る |
| 大きなプロジェクト | マンハッタン計画(1942・「プロジェクト」という言葉が初めて使われた)/コロンブスの航海/忠臣蔵(討ち入りまでの 1 年 9 か月)/ピラミッド建造/オリンピック・万博/新幹線・ダム/映画・大規模ゲームの制作/新製品の開発/会社の設立 |
|---|---|
| 身近なプロジェクト | 卒業論文/就活(For 内定)/公務員試験・TOEIC・資格試験/学園祭の出し物・サークルの公演/留学の準備/引っ越し/旅行の計画/同人誌・ZINE の制作/YouTube チャンネルの立ち上げ/小さなアプリや Web サイトの開発 |
| 太田の今のプロジェクト | 空飛ぶ一畳敷 VR(10 日)/NO!トレ(9 か月)/真葛焼のプロジェクションマッピング(展示は 10/3 から)/相馬野馬追 VR |
| 過年度の受講生 | 速読アプリ/カジュアルゲーム/ICU スケジュールアプリ/カフェ開発/学内新聞づくり/進路決定/Unreal Engine のゲーム/教育ミニゲーム集 |
プロジェクトマネージメントに共通する 12 の作業 — 今日は「分解」「順序」「スケジュール」
| # | 作業 | 中身 | この授業で扱う回 |
|---|---|---|---|
| 1 | 目標の設定 | 何を、いつまでに、誰のために | 今日(Step 0)・9/30 KPI |
| 2 | 作業の分解 | WBS——大きな仕事を管理できる単位に砕く | 今日 |
| 3 | 作業順序の図示 | 依存関係・ネットワーク図・クリティカルパス | 今日 |
| 4 | スケジュールの作成 | ガントチャート・マイルストーン・バッファ | 今日 |
| 5 | 予算の作成 | 人件費・外注・道具 | 10/21(WS 準備) |
| 6 | チーム内の調整 | 役割・会議・規約 | 9/30・10/21 |
| 7 | 報告 | 関係者への進捗報告 | 毎回のコメントシート |
| 8 | コミュニケーション | 相談・交渉・合意 | 9/30 |
| 9 | 情報提供 | 資料・記録の共有 | 10/21(仕様) |
| 10 | 意思決定 | go/no-go・優先順位・やめる判断 | 9/23 リスク |
| 11 | 進捗の計測 | 実績を入れて計画と比べる(PRP) | 今日 Step 7・毎週 |
| 12 | テーラリング | 型を自分の案件に合わせて削る・足す | 今日(3 ルールの当てはめ) |
WBS(Work Breakdown Structure・作業分解図)とは
- プロジェクトの作業を、ある切り口で階層構造に示す(木の図、または箇条書きの表)
- ワークパッケージ=WBS の最下位の作業。プロジェクトを大きな単位(マイルストーン)に分け → ワークパッケージを洗い出す
WBS の役割
- 分かる範囲と分からない範囲を把握し、何をすべきかを明確にする
- メンバーで「成功したイメージ」を共有し、必要な作業を洗い出す
- 作業の順序を論理的に決め、担当と資源(予算)の基礎になる
- 実際は、進めながら条件が明確になった時点で計画を更新する
卒業論文プロジェクト ├── プロジェクト管理(週1回の進捗確認) ├── 研究計画 │ ├── 章立て1枚を作る(3h)★最初の一歩 │ ├── 教員に見せて直す(2h+待ち3〜5日) │ └── 先行研究15本を要約(7h) ├── 調査・実験 ├── 執筆 └── 提出・発表
「作る」をそのまま管理すると大きすぎる。「見える・測れる・担当できる」単位まで砕く。
WBS をつくる5つのステップ
- プロジェクトをワークパッケージまで分解する。順序づけ・資源配分・スケジュール作成・監視ができることを目安に。
- 各ワークパッケージを定義する。細かさは、プロジェクトの期間・複雑さに見合うものにする。
- 引き受ける人が分かりやすい書式で示す。成果物が明確で、それを成し遂げるのに時間がかかるものであること。
- すべてを完了すれば目標が達成されることを確認する(=100% ルール)。
- プロジェクト・マネージメントの作業も忘れずに入れる。報告書・会議・関係者の承認取り付けを「プロジェクト管理」というまとめタスクで持つ。
WBS の3つのルール(+今回の当てはめ)
| ルール | 内容 | 今日の実習での当てはめ |
|---|---|---|
| 100% ルール | 子要素をすべて足すと親要素と等しくなる。漏れなく・重複なく。最も重要 | 「プロジェクト管理」「レビュー」「引継ぎ」も入れる。範囲外(やらないこと)は書いて外す |
| 80 時間ルール | 1 日(8h)もかからない作業は小さすぎ、2 週間(80h)以上は大きすぎるので細分化する。報告は 0/50/100% で | 学生の案件は「次の確認までに完了を判定できる単位」(0.5〜8h 程度)に調整 |
| 7×7 ルール | 1 つの親にぶら下がる子は 7 程度まで、階層は 7 レベル程度まで | 今日は 2〜3 層、各親 3〜7 項目で十分。7 層まで掘らない |
80 時間と 7×7 は目安のルール。自分のプロジェクトで適正な粒度を考えるのが課題。
WBS 分解の例 — 5 つ
卒業論文/花見/一畳敷 VR/NO!トレ/真葛焼。ソフトウェアでないものも、太田の実案件も、同じ形に分解できる。
見るところ: ①マイルストーンは 4〜7 個 ②末端の作業は「終わったかどうか」が自分で判断できる ③待ち時間と確認が入っている
卒業論文の執筆(9/16 → 12/15・自分 1 人・週 12 時間)
| ID | マイルストーン | 作業(ワークパッケージ) | 完了条件 | 工数 | 待ち | 担当 | 先行 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A01 | A テーマと章立て 〜9/26 | 先行研究を 5 本ざっと読み、テーマ候補を 3 つ書く | 候補 3 つが A4 1 枚に | 4h | — | 人 | — |
| A02 | 章立て(目次)を 1 枚にする ★最初の一歩 | A4 1 枚の目次 | 3h | — | 協働 | A01 | |
| A03 | 指導教員に見せて直す | 「この方向で」の返事 | 2h | 5日 | 人 | A02 | |
| B01 | B 先行研究 〜10/10 | 文献を 15 本集めてリスト化(著者・年・主張) | 表が 15 行 | 6h | — | 協働 | A03 |
| B02 | 各文献を要約し、自分の立場との差を 1 行書く | 15 本すべてに 1 行 | 9h | — | 人 | B01 | |
| C01 | C 調査・実験 〜11/7 | 調査の設計(質問項目・手順)を書き、教員に確認 | 教員 OK | 6h | 3日 | 人 | B02 |
| C02 | 協力者 20 名を募る(依頼文・SNS・授業で声かけ) | 20 名確保 | 4h | 7日 | 協働 | C01 | |
| C03 | 実施 → 集計 → 図表を 5 点作る | 図表 5 点 | 24h | — | 協働 | C02 | |
| D01 | D 執筆 〜12/5 | 第 1〜2 章(序論・先行研究)6,000 字 | 6,000 字 | 18h | — | 協働 | B02 |
| D02 | 第 3〜4 章(方法・結果)8,000 字 | 8,000 字 | 22h | — | 協働 | C03 | |
| D03 | 教員レビュー 2 回と修正 | 「提出可」の返事 | 6h | 各7日 | 人 | D02 | |
| E01 | E 提出・発表 12/15 | 体裁チェック(書式・引用・ページ番号) | チェックリスト全 OK | 4h | — | AI 支援 | D03 |
| E02 | 提出 ◆12/15 → 発表スライドと練習 | 受領メール/10 分で話せる | 11h | — | 人 | E01 | |
| Z01 | Z 管理 | 週 1 回、実績を入れて計画を引き直す | 13 回分の記録 | 13h | — | 人 | — |
花見を企画する(サークル 30 人・4 月上旬・幹事 3 人)— ソフトウェアでない例
| ID | マイルストーン | 作業 | 完了条件 | 工数 | 待ち | 担当 | 先行 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A01 | A 企画 3/1 まで | 目的と予算を決める(1 人いくらまでか) | 幹事 3 人が合意 | 1h | — | 人 | — |
| A02 | 候補日を 3 つ出し、参加者に希望を聞く | 回答 20 名以上 | 1h | 5日 | 協働 | A01 | |
| B01 | B 場所 3/10 まで | 候補地を 3 か所調べる(桜の見頃・トイレ・アクセス) | 比較表 1 枚 | 2h | — | AI 支援 | A01 |
| B02 | 公園の使用許可を申請する | 許可証が手元に | 1h | 14日 | 人 | B01 | |
| B03 | 下見(場所取りの範囲・電源・ゴミ捨て場を確認) | 写真とメモ | 3h | — | 人 | B01 | |
| C01 | C 人集め 3/25 まで | 告知(日時・場所・会費・持ち物) ※ B02 の許可が出てから | SNS と掲示で告知済み | 2h | — | 協働 | B02 |
| C02 | 参加者リストと会費の集金 | 30 名分の入金確認 | 3h | 10日 | 人 | C01 | |
| D01 | D 買い出し 前日 | 買い物リストを作る(食べ物・飲み物・ゴミ袋・レジャーシート) | リストと概算金額 | 2h | — | AI 支援 | C02 |
| D02 | 買い出し・運搬の分担を決めて買う | レシートと現物 | 5h | — | 人 | D01 | |
| E01 | E 当日 ◆花見当日 | 場所取り(朝 7 時・2 人) | シートを敷き終わる | 6h | — | 人 | D02 |
| E02 | 受付・会計・写真 | 参加者全員の受付 | 4h | — | 人 | E01 | |
| E03 | 片付け・ゴミの持ち帰り・原状回復 | 公園の人に確認してもらう | 2h | — | 人 | E02 | |
| F01 | F 後始末 | 会計報告と写真の共有、振り返り 1 枚 | メンバーに送付 | 2h | — | 協働 | E03 |
| Z01 | Z 管理 | 雨天時の代替案(Plan B)を決めておく | 代替日と室内案 | 1h | — | 人 | A02 |
空飛ぶ一畳敷 VR(10 日間・人 3 名+AI エージェント)
| ID | マイルストーン | 作業 | 完了条件(=実物で確かめる) | 日 | 担当 | 先行 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A01 | A 計画・仕様 D0 | 決めるべきことの質問リストを AI に作らせ、発注者に答えてもらう | 12 問すべてに回答 | 0.5 | AI→人 | — |
| A02 | 回答をもとに計画書(ゴール・決定事項・リスク)を書く | 12 トラックに分かれている | 0.5 | 協働 | A01 | |
| A03 | トラックごとの仕様書と Issue(1 作業=1 Issue) | 仕様 12 本・Issue 12 件 | 0.5 | 協働 | A02 | |
| B01 | B 基盤 D1〜D2 ★最優先 | Quest 3 で空のシーンが起動する(OpenXR・APK ビルド) | 実機で起動を確認 | 1 | 人 | A03 |
| B02 | 2 名同期と位置合わせ(手動 2 点 → 自動) | 2 台で同じ空間に立てる | 2 | 人 | B01 | |
| C01 | C シーン制作 D1〜D3 | 6 場面の骨組みを PC で再生できる状態にする | PC で通して再生 | 1 | AI×6 | A03 |
| C02 | 各場面に実素材を入れる(3DGS・絵巻・木片) | Quest 実機で場面ごとに確認 | 2 | AI+人がレビュー | C01,B01 | |
| D01 | D 語り・キャラ D1〜D3 | 台本(story.json)を確定し、音声を一括生成 | 全台詞の音声ファイル | 1 | AI | A02 |
| D02 | 語り部のモーション(座り・上半身) | 不自然でないと人が判断 | 1 | 人 | — | |
| E01 | E 統合・試験 D4〜D6 | 10 分に連結(ホスト操作盤つき) | ◆統合 v1 が通しで動く | 1 | 協働 | C02,D01,B02 |
| E02 | 通し試験 1 名 → 2 名/性能調整(72fps) | ◆2 名で 10 分完走 | 2 | 人 | E01 | |
| F01 | F 現地 D7〜 | ◆正午フィーチャーフリーズ/最終 APK・機材梱包 | 以降はバグ修正のみ | 1 | 人 | E02 |
| F02 | 現地設営・リハ → ◆デモ | 会場の光量で位置合わせが通る | 3 | 人 | F01 | |
| Z01 | Z 管理 | 毎朝 AI が前日の進捗を要約 → 人が当日の割当を決める | 10 日分の記録 | 0.5/日 | 協働 | — |
NO!トレ(9 か月・企画会社+技術会社+県)— 長期・複数組織の例
| ID | マイルストーン | 作業 | 完了条件(合格の門) | 期間 | 担当 | 先行 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A01 | A 立ち上げ 契約〜6月中旬 | キックオフ(役割・連絡経路・決め方を合意) | 議事録に全員の合意 | 1週 | 人 | — |
| A02 | シナリオ 3 本の内容を委託者と詰める | 県の監修 OK | 4週 | 協働 | A01 | |
| B01 | B 教材開発 〜7月 | AI が相手役になる会話の作り込み(3 シナリオ) | 〔機械〕自動テスト 72 本が通る | 6週 | AI+人 | A02 |
| B02 | 倫理のガードレール(言ってはいけないこと) | 〔人〕県と読み合わせ | 2週 | 人 | A02 | |
| C01 | C 端末・運営 6月中旬〜7月 | 端末 3 台の調達・設定(初期化した状態から通しで確認) | 〔人〕3 台×3 回=9 回で確認 | 3週 | 人 | — |
| C02 | 使用マニュアル作成 → 運営スタッフ研修 | スタッフが 1 人で回せる | 3週 | 協働 | C01,B01 | |
| D01 | D 会場交渉 7月〜 | 県内 7 市の商業施設と交渉・日程確定 | 7 会場の日程が確定 | 8週 | 人 | A01 |
| D02 | 会場ごとの動線・電源・掲示の準備 | チェックリスト全 OK | 各1週 | 人 | D01 | |
| E01 | E 啓発活動 8月〜12月 | 7 市を月 1〜2 市のペースで巡回(体験 → 声かけ → アンケート) | ◆12 月末に全 7 市完了 | 20週 | 人 | C02,D02 |
| F01 | F 報告 1月〜2月 | アンケート集計・分析 | 集計表とグラフ | 3週 | AI 支援 | E01 |
| F02 | 業務報告書 → ◆2/26 納品/教材の運用引継ぎ | 県の受領 | 4週 | 人 | F01 | |
| Z01 | Z 管理 | 版ごとに期日を引き直す(v1.1 → v1.2 → v1.3 → v2.0) | 各版で〔機械〕〔人〕の門を通す | 随時 | 人 | — |
真葛焼 プロジェクションマッピング(展示 10/3・演出家+美術館+制作)
| ID | マイルストーン | 作業 | 完了条件 | 工数 | 担当 | 先行 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A01 | A 絵コンテ 〜7月上旬 | 演出家の絵コンテを受け取り、カット構成の一覧(manifest)にする | 23 カットが 1 ファイルに | 8h | 人 | — |
| A02 | 各カットの尺・動き・つなぎ方を決める | カットごとに 1 行の指示 | 12h | 協働 | A01 | |
| B01 | B 3D 下地 | Blender で奥行き(depth)とマスクを自動レンダリング | 23 カット分が揃う | 10h | 自動 | A02 |
| C01 | C 静止画 〜8月 | 色のパレットを解析し、画像生成 AI でキーフレームを作る | カットごとに 1 枚 | 40h | AI | B01 |
| C02 | 花瓶を固定座標に合成(AI に描かせない) | 全カットで花瓶の位置が同じ | 12h | 自動+人が確認 | C01 | |
| C03 | 静止画の段階で演出家と合意する | 「この絵で進めて」の返事 | 6h | 人 | C02 | |
| D01 | D 動画化 〜9月中旬 | image-to-video で各カットを動かす | 23 本のクリップ | 30h | AI | C03 |
| D02 | 4K へ拡大 → つなぎ目を数値で検証 | 境界の差が基準値以内 | 16h | 自動+人 | D01 | |
| E01 | E 仕上げ ◆9月末 制作完了 | 組み立て・ループ化・音の同期(約 2 分・縦 4K・60fps) | 通しで再生できる | 20h | 協働 | D02 |
| E02 | 美術館に見てもらい、修正 | ◆先方 OK | 8h | 人 | E01 | |
| F01 | F 現場 ◆10/3 展示開始 | 実物の花瓶に合わせて投影を調整(マッピング) | 形がぴったり合う | 12h | 人 | E02 |
| F02 | 常設運用の手順書(毎日の起動・停止・トラブル対応) | 館の人が 1 人で回せる | 6h | 協働 | F01 | |
| Z01 | Z 管理 | カット一覧(manifest)を更新し続ける | 常に最新が 1 か所 | 随時 | 人 | — |
100% ルールで漏れやすい作業
| 漏れやすい作業 | なぜ漏れるか |
|---|---|
| レビュー・確認・試作を見せる | 「作る」だけを書き、「誰が見て OK と言うか」を書かない |
| 待ち時間(返答待ち・納品待ち・審査) | 作業 0 時間なので工数に出ない。でも日数はかかる |
| 承認・許可・交渉 | 「始めてよい条件」を書かないと、許可前に告知するような事故が起きる |
| プロジェクト管理(打合せ・報告・予算) | 「みんなでやる」と思って誰も書かない |
| 片付け・引継ぎ・ドキュメント | 終わったあとの作業は忘れる |
| AI 出力の検証 | 「AI が作ったから動くはず」と思い込む。今日の実習で必ず計上する |
チェックの問い: ①成果物を全部作るための作業が入っているか ②同じ作業が 2 か所にないか ③「あとでやる」と先送りにした作業はないか
ガントチャート・依存関係・クリティカルパス
1910 年代、Henry Gantt が工場の作業を「タスク×時間軸」の横棒で描いたのが起源。フーバーダム、NASA、いまも製品ロードマップに。WBS の「何をするか」に「いつ・誰が・何の後に」を加える。
| 作業(卒論の例) | 9月後半 | 10月前半 | 10月後半 | 11月 | 12月 |
|---|---|---|---|---|---|
| 章立て1枚→教員確認(待ち5日) | |||||
| 先行研究15本を要約 | |||||
| 調査設計→協力者募集(待ち7日)→実施→分析 | |||||
| 執筆(第1〜5章) | |||||
| 教員レビュー2回(各 待ち7日)→修正 | |||||
| 体裁チェック→提出 ◆12/15 |
- 依存関係: 教員の承認が出るまで調査に入れない。灰色は待ち時間(作業 0h だが日数がかかる)
- クリティカルパス: 遅れると全体が遅れる連鎖 — 章立て → 承認 → 調査 → 分析 → 執筆 → レビュー → 提出。ここに余裕(バッファ)を置く
- AI で執筆が速くなっても、教員の返答待ちは縮まない。速くできるのは「自分の手番」だけ
PRP(Project Re-Planning・計画の再設定)— 計画は直すもの
- 企画段階で作られる計画の多くは、実現方法を無視していたり、現実離れしている
- PRP=計画を正しく修正し、ヒト・モノ・カネ・時間を必要な分だけ盛り込んで、成功するべくして成功する計画に作り直すこと
手順
- 企画段階の計画(Ⅰ)を元に、必要な箇所を修正して実行計画(Ⅱ)を作る
- 進行中に実績データ(Ⅲ)を取って蓄積する
- 終了時に Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ を比べ、差分を明確にする → どの計画が妥当だったかを判断
効果
- 大雑把な計画を立てる習慣が是正される
- 個人レベルでも、うまくいったこと・いかなかったことが客観視できる
- 見落としていた小さな成功と失敗が顕在化する
太田の事例「AI で WBS を作る」— 昔と今
昔(〜2023)
- ホワイトボードと Excel で自分で分解。Backlog に手で登録
- 抜け・漏れは、痛い目に遭ってから気づく
- 計画の更新は「時間があるとき」=ほぼ更新されない
今(2026・一畳敷 VR の実物)
- AI が初稿を作り、人が判断して直す。分解の速さは 10 倍、でも確かめる仕事は増えた
- 切った作業がそのまま AI への依頼文になる(1 Issue = 1 エージェント)
- 計画の更新は毎朝。AI が前日の進捗を要約し、人が当日の割当を決める
- 質問 — AI に「決めるべきこと」の質問リストを作らせ、発注者が答える
- 計画 — 回答を渡して計画書(ゴール・決定事項・作業分解・担当・リスク)を書かせる
- 仕様 — 作業ごとに「何ができたら完了か」を書かせ、人が確認
- Issue — 1 作業=1 Issue。チェックリストで下位タスク
- 実行 — AI エージェントが実装、人がレビューしてマージ
- 毎朝の再計画 — AI が要約 → 人が割当(=PRP)
学生版: ①②は今日 Claude/Gemini でそのままやる(Step 0〜2)。④は「表の 1 行=AI への依頼になる粒度」。⑥は「週 1 回、実績を入れて引き直す」。スプレッドシートが正本、AI は初稿・質問・変換の相棒。
空飛ぶ一畳敷 — 12 に分解した作業と、人/AI の担当
| ID | 作業(トラック) | 担当 |
|---|---|---|
| S01 | MR 導入(天の声・表門) | 実装 AI |
| S02 | 時の間(武四郎・地図・絵巻)+アート生成 | 実装 AI+人(画像生成) |
| S03 | 山道ライド・高風居の外観 | 実装 AI |
| S04 | 室内・時の転換 | 実装 AI |
| S05 | 五つの木片(触れる→光る→語る) | 実装 AI |
| S06 | 問いと答え・帰還 | 実装 AI |
| T01 | Quest 3 基盤(XR・ビルド)最優先・初日 | 共同開発者(人) |
| T02 | 2 名同期・位置合わせ(手動 → 自動) | 共同開発者(人) |
| T03 | 3DGS が Quest で動くかの検証(go/no-go) | 人+AI |
| T04 | 語り・音声パイプライン | 実装 AI |
| T05 | キャラクター(座り・鳥・同行者) | 人 |
| T06 | 演出統合(10 分のタイムライン・操作盤) | 計画 AI が設計 → 実装 AI |
この表から読み取ってほしいこと
- 依存の要点を 1 行で書く: 「T01(XR 基盤)と T06(演出の契約)が最初。各シーンは PC 単体で動く状態から着手し、T01 が入り次第 Quest で確認」
- 人が握った作業: 計画・仕様・レビュー・マージ・実機確認・go/no-go の判断。AI に渡したのは「完了条件が書けた実装」
- それでも事故は起きた: 同じ Issue を 2 つのエージェントが同時に進めた → 「取ったら宣言する」規約を追加。規約は失敗から生まれる
S05 五つの木片/本文: 仕様書へのリンク・完了条件・チェックリスト(☐ 触れると光る ☐ 語りが始まる ☐ PC で再生 ☐ Quest で確認)/ラベル: ready(AI が取ってよい)10 日間の日程(D0〜D7)— マイルストーンと「判断日」
| 日 | 夕方までの到達点 ◆ | 誰が何を |
|---|---|---|
| 8/29 D0 | ◆ 計画・リポジトリ・仕様 12 本・Issues | 人+計画 AI |
| 8/30 D1 | ◆ 空のシーンが Quest で起動/全シーンの骨組みが PC で再生 | 人: XR 基盤/AI: 骨組み生成 |
| 8/31 D2 | ◆ 3DGS go/no-go(判断日)/各シーンに実資産 | 実装 AI ×6(PC 2 台で並列) |
| 9/1 D3 | ◆ 各シーンを Quest 実機で単体確認 | 人: PR レビュー → マージ → 実機 |
| 9/2 D4 | ◆ 10 分連結(統合 v1)/2 名同期/自動位置合わせ go/no-go | 人+AI |
| 9/3–9/4 | ◆ 通し試験 v1(1 名)→ v2(2 名)/運用手順書 | 人 |
| 9/5 D7 | ◆ 正午フィーチャーフリーズ(以降はバグ修正のみ)/梱包 | 人 |
| 9/6–9/8 | 現地設営・リハ → ◆ デモ | 人 |
参考事例 — NO!トレ(9 か月の長期プロジェクト): フェーズ表と「合格の門」
| 期間 | 主要作業 | 担当 |
|---|---|---|
| 契約〜6月中旬 | キックオフ/シナリオ詳細協議/大学との連携協議 | 企画会社+技術会社 |
| 6月中旬〜7月 | 端末 3 台の調達・設定/方言対応の学習開始/教材本番版 | 技術会社 |
| 7月 | 内部テスト/マニュアル/スタッフ研修/商業施設との交渉 | 企画+技術 |
| 8月〜12月 | 県内 7 市で順次啓発活動(月 1〜2 市) | 企画会社 |
| 1月 | アンケート集計・分析/報告書 | 企画会社 |
| 2月 | 報告書提出(2/26)/教材の運用引継ぎ | 全員 |
マイルストーン: 6月末 α版/7月末 β版+研修/8月初旬 第1回啓発/12月末 全7市/2/26 納品。学生の案件とスケールは違うが、型は同じ。
改善計画(9/14 版)の「合格の門」
| 直し | 合格の門=何ができたら完了か |
|---|---|
| 配信スクリプトは検査 NG なら配信を止める | 〔機械〕わざと壊して止まることを確認 |
| 初期化した端末で最初のひと言が出る | 〔人〕端末 3 台 × 3 回=9 回で確認 |
| 方言対応を入れるかどうか | 〔判断日〕9/19 に go/no-go |
版ごとの期日を引き直した(v1.1 9/17 → v1.2 9/22 → v1.3 9/25 → v2.0 9/28)。9/29–30 は予備日で、作業を入れない。「やらないと決めたもの 3 つ」も明記。
過年度の受講生が作った WBS(10 件・匿名化済み)
- 卒論作成/目に優しい速読アプリ/卒業研究/カジュアルゲームアプリ/就活(For 内定)/公務員試験合格/TOEIC 800 点/学内新聞づくり/進路決定
- それぞれに WBS 表+ガント+リスク管理シート。今日の実習の「ゴールの姿」です
- 各事例に太田のコメント(良い点/足りない点)を付けてあります
https://icu-course.pages.dev/SWD/wbs-examples/(パスワードは授業で配布)
よくある「足りない点」(先に知っておく)
- 「指導教員の返答待ち」「協力者募集」のような待ち時間が工数に入っていない
- 「SPI 対策 90 人日」のように大きすぎる作業がそのまま(80 時間ルール)
- 担当・進捗が空欄のまま——ひとりでも「自分」と書き、進捗を更新して初めて PRP ができる
- テンプレの日付(2017 年)のまま——起点を自分の期日に合わせる
事例紹介 ① 配布している WBS フォーマットと、書き方のコツ
2022 年から配っている Google スプレッドシートのフォーマット(今日の提出テンプレの元)。列の構成そのものが「何を決めるべきか」のチェックリストになっている。
| 列 | 書くこと | ねらい |
|---|---|---|
| WBS ナンバー | A01・A02…/B01…(マイルストーンごとに記号を変える) | 依存関係と担当を、番号で指せるようにする |
| 作業項目 | 2 階層くらいで記入(レベル2 = マイルストーン/レベル3 = ワークパッケージ) | 深く掘りすぎない。7×7 ルール |
| 工数(人日) | 人日=1 人が 1 日でできる作業量。人時でもよい | 「誰かが何時間やるか」を数字にする |
| 必要人数/担当 | 何人でやるか・誰がやるか | 同じ時間に同じ人を重ねていないか分かる |
| 進捗 | % のほか「処理中/済」など状況でもよい | 0/50/100% で十分(80 時間ルール) |
| 開始予定・終了予定 /開始実績・終了実績 | 上段が予定、下段に実績を入れる | 予定と実績を比べる=PRP の材料になる |
| 日付欄(右側) | 1 日単位でも週単位でもよい。色を塗ってガントにする | 依存と待ち時間が目で見える |
Alt+Enter で改行/色分けで進捗/日付は 10/10 形式記入: 1 つのセルに 2 つの作業を入れない/具体的に(「調べる」→「競合 5 件の価格を調べて表にする」)
事例紹介 ② 昨年度(2025)の受講生 28 名は、何をプロジェクトにしたか
同じフォーマットで、28 名がそれぞれ自分のプロジェクトの WBS を作りました。テーマの一部(本人が名前を付けていたもの):
| テーマ | どんなプロジェクトか |
|---|---|
| Coin database | コインのデータベースを作る。収集・分類・検索の仕組み |
| Enhancing musical perception through color mapping | 音楽の知覚を色で拡張する。研究とプロトタイプ |
| Multi-Modal BCI Game Interface with Adaptive Learning | 脳波などを使うゲーム操作インターフェース。研究テーマをそのまま計画に |
| AR スタンプラリー作成による卒業論文執筆 | 制作と論文執筆を 1 つのプロジェクトとして並行管理 |
| (ほか 24 名) | 卒論・就活・試験・アプリ制作・イベント運営など。テーマ名を付けずに提出した人も多い |
② 制作と論文のように、2 つの締切があるものほど WBS が効く
③ 英語のテーマでも構わない(課題は日英どちらでも可)
提出したら、シークレットウィンドウで自分の URL を開いて確かめるのが確実です。
2020〜22 年度の 10 名分は、WBS・ガント・リスク管理シートの実物を受講生ページに置いています(学籍番号・氏名は削除済み)。
実習(17:30–19:20)
自分の計画を、AI と他者の力で実行可能にする
3 人組をつくって自己紹介 → 自分のプロジェクトを決める → まず自分の頭で分解する → AI に分解させる → 練習問題で「欠陥」を診断 → 自分の案を直す → 3 人で見直す → ガント → 提出(→ 授業後に再計画)
いきなり AI に聞かない。最初の 7 分は、紙とペンだけ。
自分が何を思いつき、何を思いつかなかったか——それが今日いちばんの収穫です。
3 人組をつくって、自己紹介(1 人 2 分・計 6 分)
近くの人と 3 人組をつくってください(33 人=11 組)。この 3 人で今日ずっと動きます——練習問題の診断(Step 3)も、計画の見直し(Step 5)も同じ組で。
話すこと(1 人 2 分)
- 名前・メジャー・学年
- 何か開発をしたことがありますか?
プログラミング・Web・ゲーム・動画・音楽・電子工作など。「ない」でも構いません - 何かプロジェクトをやったことがありますか?
学園祭・サークルの公演・イベント・部活の大会・研究・アルバイトの企画など。うまくいった/いかなかった話も - AI を使って、どんなことをしていますか?
レポート・翻訳・プログラミング・画像・相談相手。使っていない人は「使っていない」で OK - 今日、自分のプロジェクトにしたいこと(まだ決まっていなければ候補でよい)
② 経験も AI の使い方も人によって全然違う。得意な人に聞けるようになる
③ 最終回のワークショップは 3 人チームで制作。今日が最初の顔合わせ
「それは何人でやったの?」「いちばん大変だったところは?」「AI に任せてみて、うまくいかなかったことは?」
時間が余ったら、4 の「AI の使い方」を掘ってください。今日の実習で、その差がそのまま出ます。
実習の全体像(110 分・途中で 10 分休憩)
| 配分 | Step | やること | 残すもの |
|---|---|---|---|
| 6 分 | — | 3 人組をつくって自己紹介(開発経験・プロジェクト経験・AI の使い方・今日のテーマ候補) | 今日ずっと動く 3 人組 |
| 8 分 | 0 | 目的・対象者・成果物・範囲外・期限・使える時間・最初の 1 週間の最小の一歩(MVP)を 1 枚に書く | 前提と完了条件 |
| 7 分 | 1 | まず自分の頭で分解する(紙・AI なし)。思いつく作業を全部書き、個数を数える。書き切れなくてよい | 自分の初稿 |
| 10 分 | 2 | 同じ前提を Claude(または Gemini)に渡し、WBS の初稿(プロンプト①②)。手案はまだ渡さない | AI 初稿と入力文 |
| 10 分 | 3 | 配布の「欠陥入り練習 WBS」を 3 人で診断(5 つの問い) | 不足・矛盾と影響 |
| 10 分 | 休憩 | ||
| 15 分 | 4 | 手案と AI 案を比べて修正。「手案だけ/AI だけ/両方にない」を各 3 つ記録。100%・粒度・依存・担当の根拠をチェック | 修正版 |
| 15 分 | 5 | 3 人組で相互レビュー(1 人 5 分) | 指摘メモ |
| 20 分 | 6 | 主要 8〜10 作業に依存・担当・工数・待ち時間を入れ、プロンプト③で Mermaid gantt → mermaid.live で描画 | ガント |
| 10 分 | 7 | Google スプレッドシート(テンプレ)に貼って提出 | 提出 |
| 課題 | 8 | 条件を変えて再計画する(PRP)——授業後に自分でやる。次回 9/23 と課題1 で使う | 延期・削減・並行化した内容 |
Claude が止まったら Gemini に同じ文を貼る。両方止まったら配布の「保存済み AI 初稿」で Step4 から続ける。AI を使うこと自体は必須ではない。
手順書:自分のプロジェクトの WBS を作る
はじめに(6 分)3 人組をつくって自己紹介
名前・メジャー・学年/開発をしたことがあるか/プロジェクトをやったことがあるか/AI をどう使っているか/今日のテーマ候補。この 3 人で今日ずっと動きます。
Step 0(8 分)前提を 1 枚に書く
目的/対象者(誰のため)/成果物/範囲外(やらないこと)/期限/使える時間(週 h)/最初の 1 週間の最小の一歩。WBS が 30 個は出そうな題材を。
Step 1(7 分)まず自分の頭で分解する(AI なし・紙)
思いつく作業を全部書く。数を数える。書き切れなくてよい。ここを飛ばすと、今日の実習は意味がなくなります。
Step 2(10 分)AI に初稿を作らせる
claude.ai を開く → プロンプト①(質問に答える)→ プロンプト②(WBS の表)。手案はまだ渡さない。出力はコピーして保存。
Step 3(10 分)練習問題を 3 人で診断
配布「欠陥入り練習 WBS」に 5 つの問いを当てる。答えは後で開く。
Step 4(15 分)比べて直す
手案だけにあった/AI だけにあった/両方になかった作業を各 3 つメモ。チェック: 100%(管理・レビュー・待ち時間が入っているか)/粒度(0.5〜8h)/先行 ID が循環しない/「AI 支援」の行にも人の責任者。
Step 5(15 分)3 人で相互レビュー
1 人 5 分。自分の計画を説明 → 他の 2 人が質問「無理はないか」「足りないものは」「AI に任せすぎでは」。
Step 6(20 分)ガント
主要 8〜10 作業に依存・担当・工数・待ち時間 → プロンプト③ → 出た Mermaid を mermaid.live(登録不要)に貼る → PNG 保存(任意)。
Step 7(10 分)提出
WBS テンプレ(Google スプレッドシート)をコピーし、1 枚目に表、2 枚目に Mermaid テキスト、3 枚目に手分解メモ+差分。「リンクを知っている全員が閲覧可」にして、共有シートの自分の行に URL を貼る。
提出先スプレッドシート
Step 8(課題・授業後)条件を変えて再計画する
「協力者の返答が 3 日遅れる」「使える時間が週 2 時間減る」。何を延期・削減・並行化したか、重要な変更を 3 つ書く。最初の一歩(MVP)は守る。次回 9/23 と課題1 で使います。
プロンプト① — 前提を対話で詰める(Step 2 の前半)
あなたは経験豊富なプロジェクトマネージャーです。私のプロジェクトを、WBS(作業分解)にできるまで具体化してください。 プロジェクト: 「(1行で)」 期限: 「」 成果物: 「」 対象者(誰のため): 「」 使える時間: 「週 ○ 時間」 範囲外(やらないこと): 「」 最初の1週間の最小の一歩: 「」 足りない情報があれば、5 問以内で一つずつ質問してください。 私が全部答えたら、「目的/対象者/成果物/期限/制約(時間・お金・スキル)/範囲外/最初の一歩」を 10 行以内でまとめてください。 分からないことは推測せず、「未確認」と書いてください。
ポイント: AI に質問させるのが今風。自分でも気づいていない前提(誰が承認するのか、いつまでに何を見せるのか)が出てくる。一畳敷の「キックオフ質問 12 問」と同じ発想。
プロンプト② — WBS の初稿(Step 2 の後半)
上のまとめをもとに、WBS を作ってください。条件: - レベル1=フェーズ(「プロジェクト管理」を必ず含める)、レベル2=成果物、レベル3=作業。合計 30〜50 件 - 各行に: ID、親ID、成果物/作業、完了条件(何ができたら終わりか)、担当する人、AI が支援できる部分、確認者、人の工数(時間)、待ち時間(日)、先行ID - 最下位の作業は 8 時間以内。AI が支援する行は「生成 ○h + 人の検証 ○h」に分ける - 返答待ち・納品待ち・審査などの「待ち時間」は、作業とは別の行にする - 出力は Markdown の表。最後に「見落としやすい作業」を 5 つと、「仮定したこと」「未確認のこと」を箇条書きで
Mermaid とは — 文字で書くと図になる記法(無料・登録不要)
- Mermaid = テキストで図を書くためのオープンソースの記法。フローチャート・ガントチャート・シーケンス図などが書ける
- AI はこの記法を知っているので、「Mermaid の gantt で」と頼めば図をテキストで出してくれる。画像を作らせるより速くて、無料枠でも止まらない
- 描画は mermaid.live(ブラウザ・登録不要)に貼るだけ。PNG/SVG で保存できる
- 同じテキストを GitHub の Markdown や Notion に貼っても図になる。テキストなので直しやすく、提出・共有しやすい
| 行 | 意味 |
|---|---|
gantt | ガントチャートを描く宣言 |
dateFormat YYYY-MM-DD | 日付の書き方 |
section 研究計画 | 見出し(WBS のレベル 1) |
章立て1枚 :a1, 2026-09-17, 3d | 作業名 : ID, 開始日, 日数 |
教員確認(待ち) :a2, after a1, 6d | after=先行タスクの後に始める(依存関係) |
提出 :milestone, m1, 2026-12-15, 0d | マイルストーン(◆) |
gantt title 卒業論文(例) dateFormat YYYY-MM-DD section 研究計画 章立て1枚 :a1, 2026-09-17, 3d 教員確認(待ち) :a2, after a1, 6d 先行研究15本 :a3, after a1, 14d section 執筆 第1〜2章 :b1, after a3, 18d section 提出 提出 :milestone, m1, 2026-12-15, 0d
↑ これをそのまま mermaid.live に貼ると、下のような横棒の図になる。
| 研究計画 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
|---|---|---|---|---|
| 章立て1枚 | ||||
| 教員確認(待ち) | ||||
| 先行研究15本 | ||||
| 第1〜2章 | ||||
| 提出 |
プロンプト③ — Mermaid gantt に変換(Step 6)
上の WBS のうち主要な作業 8〜10 件を、Mermaid の gantt に変換してください。 - dateFormat YYYY-MM-DD、開始日 2026-09-17、期限 「」 - section=レベル1、タスク=作業。先行タスクは after を使う - 待ち時間は別タスクにし、名前の末尾に(待ち)と書く - マイルストーンを 3 つ(milestone): 最初の一歩、中間、提出 - コードブロックだけを出力してください
gantt title 卒業論文(例) dateFormat YYYY-MM-DD section 研究計画 章立て1枚 :a1, 2026-09-17, 3d 教員確認(待ち) :a2, after a1, 6d 先行研究15本 :a3, after a1, 14d section 執筆 第1〜2章 :b1, after a3, 18d 提出 :milestone, m1, 2026-12-15, 0d
出てきたコードを mermaid.live に貼ると図になる(登録不要)。PNG/SVG で保存できる。同じテキストは GitHub や Notion にも貼れる。
描画が成功しても計画が正しいとは限らない。WBS=何を揃えるか/依存=どの順か/ガント=いつ、の 3 つを区別する。ガントは今日の提出物では任意。
Step 4 — 手案と AI 案を比べて、自分の計画に直す(15 分)
記録する(3 枚目のシートへ)
- 手案だけにあった作業(AI が見落とした。たいてい、あなたしか知らない事情)× 3
- AI 案だけにあった作業(自分が見落とした。たいてい、管理・確認・待ち)× 3
- 両方になくて足した作業 × 3
この「差分」が今日の評価対象。AI の表をそのまま出しても点にならない。
チェックリスト
| 観点 | 問い |
|---|---|
| 100% | プロジェクト管理・レビュー・待ち時間・片付けが入っているか。範囲外が混ざっていないか |
| 粒度 | 1 行が 0.5〜8h か。「開発 40h」は分割。「メール 5 分」は親に吸収 |
| 依存 | 先行 ID が循環していないか。「すべて」は依存を書いていないのと同じ |
| 担当 | 「AI 支援」の行にも人の責任者。AI に任せる根拠は「完了条件が明確・定型・低リスク」か |
| 時間 | 「依頼文を書く 30 分」と「返答を待つ 3 日」を分けたか |
| 一歩 | 最初の 1 週間の最小の一歩が、表の最初の方にあるか |
Step 7 — 提出(10 分)と、今日の評価の見方
提出物(Google スプレッドシート 1 本)
- 1 枚目「WBS」: テンプレの列(ID・親ID・成果物/作業・完了条件・担当する人・AI 支援内容・確認者・人の工数・待ち時間・先行ID・開始・終了)
- 2 枚目「Mermaid」: プロンプト③の出力テキスト(図の PNG は任意)
- 3 枚目「手分解メモ」: Step 1 の写真かメモ、Step 4 の差分 3+3+3、Step 7 の変更 3 件
手順: ① 上のシートを開く(ICU の Google アカウントで) ② テンプレのシートを自分のドライブにコピー(ファイル › コピーを作成) ③ 自分の WBS を書く ④ 「リンクを知っている全員が閲覧可」に設定 ⑤ 共有シートの自分の行に、氏名・学籍番号・URL を貼る
学籍番号の行が無い人は、いちばん下に追加してください。URL が開けない設定のままだと「未提出」になります。
今日の提出で見るところ(課題1 の土台)
| 観点 | 見る |
|---|---|
| 100% ルール | 管理・レビュー・検証・待ち時間が入っているか |
| 粒度・依存 | 0.5〜8h、循環なし、クリティカルパスが言えるか |
| 人/AI の分担 | AI に任せる根拠。人の責任者がいるか |
| 検証の記録 | 差分 3+3+3 と、再計画の変更 3 件が書いてあるか |
Step 8【課題】条件を変えて再計画する(PRP の初体験)
この Step は授業では行いません。提出したあと、次回 9/23 までに自分でやってください(課題1 の一部)。
条件変更(どちらか、または両方)
- 協力者(教員・依頼先・仲間)の返答が 3 日遅れる
- 使える時間が 週 2 時間減る
やること
- クリティカルパス上の作業に印をつける
- 何を延期・削減・並行化するか決める。最初の一歩(MVP)は守る
- 重要な変更 3 件と理由を 3 枚目のシートに書く(提出済みのシートに追記してよい)
AI の使い方: 変更した条件を貼って「影響を受ける行と、延期・削減・並行化の案を出して」と頼んでよい。ただし何を削るかは自分で決める。
次回まで(授業外学習 225 分の目安)と課題1
次回 9/23(水・祝日ですが授業あり): リスク管理
- WBS の見直し(60 分): 今日の WBS を 1 人で読み直し、「想定していなかった作業」を 3 つ足す。実績(今週やったこと)を入れる
- 環境(未了の人・15 分): claude.ai の無料登録と gemini.google.com を使える状態に。Claude は Settings › Capabilities で「Code execution and file creation」を ON
- 予習(30 分): 自分の WBS を見ながら「うまくいかないとしたら何が原因か」を 5 つ書き出す → 次回のリスク登録票の材料
- 次回は、今日の WBS にリスク登録票を足し、計画を引き直します。今日のスプレッドシートをそのまま使うので消さないこと
- 前提(Step 0 の 1 枚・最初の一歩を含む)
- WBS(担当=人/AI 支援/確認者、完了条件、待ち時間つき)
- ガント(Mermaid テキストか、スプレッドシートの日付列)
- リスク登録票(9/23 の授業で作る)と、それを反映した計画の修正
- 「最初の一歩」を実際にやった記録(写真・メール・1 枚など、やった証拠)
- AI 利用ログ: どこで AI を使い、どこを自分で直したか(差分 3+3+3)
今日の提出(Step 8)→ 9/23 でリスクを足す → 10/7 までに提出、の 3 段階。今日の分だけで完成させなくてよい。
コメントシート(19:20–19:30・授業時間内に Moodle へ)
- 自己紹介: メジャー・学年/プログラミング経験(なし・少し・ある)/AI をどう使っているか
- つくりたいもの・プロジェクトにしたいもの(1 つ以上。なぜそれか。今日の実習で選んだものと違ってもよい)
- 今日、AI が見落としたこと/自分が直したことを 1 つずつ
- 質問・要望(次回答えます)
//共有なし 文章 // で囲んでください。コメントは次回シェアし、質問には次回答えます。出席は Moodle の出席機能でも登録してください(コメントシートとは別)。
参考リンク
まとめ — 今日の 7 つ
| 今日やったこと | 持ち帰ってほしいこと | |
|---|---|---|
| 1 | この授業の位置づけ | 題材はソフトウェアだが、学ぶのは「つくりたいものを、他の人と協力して実現する」方法論。卒論・就活・学園祭・事業でも手順は同じ |
| 2 | 「プログラミングは2割」 | 残り 8 割は、何を・誰のために・どう作り、どう確かめ、どう届けるか。AI で実装が速くなった分、確かめる仕事と決める仕事が増えた(DORA・Stack Overflow・Veracode) |
| 3 | まず自分の頭で分解した | AI に聞く前に自分で考える。自分にしか書けない作業(自分の事情・関係者・締切)と、自分が忘れがちな作業(管理・レビュー・待ち時間)の両方が見えた |
| 4 | WBS の 3 つのルール | 100%(漏れなく・重複なく。管理とレビューも入れる)/粒度(次の確認までに完了を判定できる単位)/7×7(人が扱える広さ・深さ) |
| 5 | 順序と時間を入れた | 依存関係・クリティカルパス・待ち時間(作業 0 時間でも日数はかかる)。AI で速くできるのは自分の手番だけ |
| 6 | AI に分解させて、自分で直した | AI は初稿・質問・変換の相棒。判断と責任は自分。「AI 支援」の行にも人の確認者を置く。見積りは「生成 + 検証」 |
| 7 | 条件を変えて引き直した(PRP) | 計画は「立てて終わり」ではない。条件が変わるたびに引き直す。削るときも最初の一歩(MVP)は守る |
次回 9/23(水・祝日ですが授業あり): リスク管理 — 今日の WBS に「うまくいかない条件」と対策を書き込みます。今日のスプレッドシートを使うので消さないこと。
宿題: ①WBS を見直して作業を 3 つ足す ②「うまくいかないとしたら何が原因か」を 5 つ書き出す ③環境(claude.ai・gemini.google.com)。課題1 の締切は 10/7 24:00(リスク登録票と「最初の一歩をやった記録」を含む)。