第1回 イントロダクション
担当: 太田啓路 ohtak@icu.ac.jp
今日の流れ(150分)
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 10:10 | 自己紹介・この授業について(ポジション・目的・スケジュール) |
| 10:35 | 太田の制作事例 ① 仕事(映像関連) — 3作品 |
| 11:25 | 休憩(10分) |
| 11:35 | 太田の制作事例 ② 生成AI — 5作品 |
| 12:15 | ミニワーク(3人グループ・20分) |
| 12:40 | コメントシート(授業時間内に提出) |
後半は 1作品につき「何を作ったか → どう作るか → 難しかったところ → 実際の映像 → まとめ」の順で紹介します。
今日は PC 不要、メモだけで大丈夫です。
自己紹介 ① 研究者として
- 太田 啓路(おおた けいじ)/ 情報科学メジャー シニアレクチャラー
- 博士(国際情報通信学) — 早稲田大学 国際情報通信研究科 修了
- 博士論文: 「安全かつ快適な3次元映像表現に関する人間工学的研究」
- 研究テーマ: 3Dゲームにおける映像酔い(SEGA 共同研究)、立体映像のインタラクティブ応用
- 一貫した問い: 「その映像は、人の身体にとって安全で快適か」
自己紹介 ② 映像技術の会社をやっています
株式会社リ・インベンション(2013年設立/前身 QXD は 2008年〜)代表
秋葉原UDX の 3Dシアター・3Dスタジオ担当(2006年〜)が出発点
| VRライブ | HMD を40〜100台同時制御する没入型ライブ |
|---|---|
| 8K VR撮影 | ライブ・舞台・文化財の 360°/180°3D 制作 |
| 2D→3D変換 | 映画・シアター・プロモーション映像の立体化 |
| 生成AI × 映像制作 | AI の生成力とプロの審美眼を組み合わせる |
| 3Dスキャン | フォトグラメトリ・Gaussian Splatting |
| 映像表示システム開発 | ドームシアター・多面スクリーン・同期上映 |
自己紹介 ③ これまでの仕事から

北欧初の3D映画

全編 2D→3D

新体感ライブ 8KVR

8K3D ドームシアター

祭り 360°3Dシアター
| 2010 | 『Moomins and the Comet Chase(ムーミン谷の彗星)』北欧初の3D映画制作 |
| 2014 | 映画『STAND BY ME ドラえもん』全編 2D→3D変換 |
| 2016 | 『ONE PIECE FILM GOLD』一部 2D→3D変換 / 生中継 180°3D VR |
| 2018 | 8K VR撮影(アイドルライブ) / 青い森ホール「3D青森祭りの魂」360°3Dシアター |
| 2020–21 | NTTドコモ「新体感ライブ CONNECT」 8K VR 制作 |
| 2024 | NHK 超体験フェス リアルタイム映像表示システム / NHK 8K3D ワンダービジョン |
| 2025 | 神席 ExWarp VR LIVE(渋谷FOWS)— ルミエール・ジャパン・アワード VR部門 特別賞 |
| 2026 | 3D VR撮影 / 相馬野馬追 VR / 生成AI プロモーション / プロジェクションマッピング |
この授業のポジション
これまで 「マルチメディアシステム」 という科目で、映像とインタラクティブ制作をまとめて扱っていました。
2026年度から 2つに分けました。
| 科目 | 扱う範囲 | 学期 |
|---|---|---|
| VMT(この授業) | 映像 — 撮る・編集する・エンコードする・公開する | 秋 |
| ICC インタラクティブコンテンツ制作 | 3Dモデリング・ゲームエンジン・インタラクティブ制作 | 冬 |
関連科目:情報科学概論(ICS)= 映像・XR の理論と人間工学 / コンピュータゲーム(CGS)= ゲーム技術
この授業の目的
① 映像技術の「全体地図」を持つ
撮る(360°・3D・ドローン)→ 作る(編集・VFX・生成AI)→ 届ける(圧縮・公開)。
バラバラに聞こえる技術が、1本の作品では必ず繋がっていることを体で理解する。
② 「いま現場で起きていること」に触れる
教科書に載る前の技術が、実際にどう使われ、何ができなくて、どう回避されているか。今日の後半がそれです。
③ 無料のツールだけで、作品を1本完成させる
大学に編集ソフトはありません。全部無料のツールと、みなさんのスマートフォンで、チームで1本作って上映します。
授業スケジュール(全9週)
| 週 | 火 3限 11:35–12:50 | 木 2-3限 10:10–12:50 |
|---|---|---|
| 1 | 9/8 休講 | 9/10 今日:イントロ+太田の制作事例 |
| 2 | 9/15 これまでの作品を観る | 9/17 機材の話・チーム分け・バーチャルプロダクション |
| 3 | 9/22 撮影実習 | 9/24 撮影実習 |
| 4 | 9/29 撮影実習 | 10/1 撮ったものを見せ合う |
| 5 | 10/6 編集 | 10/8 編集② ・ツール紹介 |
| 6 | 10/13 休講(ICU祭) | 10/15 生成AI 回 |
| 7 | 10/20 圧縮・エンコード/最終作品の進め方 | 10/22 チーム結成・企画 |
| 8 | 10/27 作品制作 | 10/29 作品制作 |
| 9 | 11/3 作品制作 | 11/5 上映会 / 11/10(火)総括 |
※ 変更の可能性あり。確定版は毎回 Moodle と授業内で案内します。
評価・課題・用意するもの
| 区分 | 比率 | 中身 |
|---|---|---|
| 出席(コメントシート) | 50% | 毎回、授業時間内に Moodle から提出 |
| 課題 | 50% | レポート2本程度(映像体験・映像技術)/ 最終作品(チーム制作)/ 講評参加 |
最終作品は チーム制作(チーム分けは 9/17)。
編集ソフトも生成AIも、無料で使えるものを指示します。 どれを入れるかは 追って連絡しますので、今はまだインストールしないでください。
授業外学習の目安 225分/週。
受講のルール
これから 8つの作品を紹介します。話すのは技術そのものより、何を決めたか/何ができなかったかです。
| 各作品で必ず話すこと |
|---|
| ① 何を作ったか ② どう作るか ③ 難しかったところ ④ 実際の映像 ⑤ まとめ |
スマートフォン等での撮影・録画・SNS投稿は禁止です。見つけた場合は退出してもらいます。
映像を見せるのは 授業中のみです。配布資料からは再生できません。
太田の制作事例 ① 仕事(映像関連)
1. まるり & ALMONDot GAIN VRライブ / 2. アーティストの 3D VR 撮影 / 3. 相馬野馬追 VR
① 何を作ったか
- 神席(KAMISEKI)"ExWARP" VR LIVE
2025年7月18日・渋谷 FOWS - 上映型VR ExWARP — リアルのパフォーマンス × VR空間
- 出演: まるり / ALMONDot GAIN
- 観客 全員がHMDを着けて、同じ瞬間に同じ映像を見る
- ルミエール・ジャパン・アワード2025
VR部門 特別賞

関連リンク
② どう作るか
制作
- グリーンバックスタジオで 180°3D 撮影
- キーイング → CG背景と合成
- HMD 全台に 事前ダウンロード
- 会場で 一斉同期上映
当日
- 同時体験 最大100名規模(劇場型)
- 映像 8K〜 + 空間音響
- HMD内の音 + 会場スピーカーを連動
③ 難しかったところ — 100台を同期させる
| 課題 | 現場の答え |
|---|---|
| ネットワーク | 民生ルーターは同時約30接続が上限 → 業務用APを複数持ち込む(1台25台目安) |
| 会場の Wi-Fi | 使わない。専用ネットワークを持ち込む |
| 配信方式 | ストリーミングは帯域が足りない → 全端末に事前DLしてローカル再生 |
| 電池 | 予備機を全体の10%確保。上映尺に対する充電サイクルを設計 |
| 端末設定 | スリープ・境界(Guardian)・コントローラをすべて無効化 |
| 同期精度 | 既存製品の公称は「100ms以内」= 会場スピーカーと合わせるには足りない |
映像の仕事に見えて、半分はネットワークと電源の仕事です。
④ そこで、自分たちで作ってみた(仮想100台での実測)
| 指標 | 結果 |
|---|---|
| 台間のバラツキ | 2〜3ms |
| 予定時刻との誤差 | p95 ≤ 2.5ms |
| Wi-Fi断(15秒) | 自律再生を継続→復帰合流 |
| 管理PCを強制終了 | 7.4秒で復旧・HMDは止まらない |
| 900MBの配布 | 全100台 3.5秒 |
| Quest 3 実機 | ±0.42ms |
事前に配って、各端末が自律実行し、時刻だけを合わせる
開発中の教訓
- OSのタイマーは信用できない(Windowsは15.6ms単位)
- 「処理済み」の判定を間違えて 100台全部が開演コマンドを無視した
- 再接続直後は、時刻を測り直すまで合流させない
⑤ まとめ
- 作品が良くても、当日動かなければゼロ
- だから現場では「電池・発熱・ネットワーク・予備機」を先に設計する
- みなさんの最終作品も、上映環境を先に決めてから作ると失敗しません
(何で見せる? 音は出る? ファイル形式は?)
① 何を作ったか
- あるアーティストの 180°3D VR コンテンツ
- 2026年3月26日・グリーンバックスタジオで撮影
- 体験尺 約7分(インタビュー+弾き語り)
- Apple Vision Pro 向けの高精細版も制作
(人物は伏せています)
② どう作るか — 使ったカメラ
- デュアル 8K×8K センサー(片目 8160×7200)
- 180°以上・固定焦点のステレオレンズ一体型
- 90fps/16ストップ、Blackmagic RAW
- Apple Immersive Video の 公式制作機材
- 一眼の筐体に デュアル魚眼レンズ1本で VR180 3D
- 8K 60p RAW(左右を半円で記録)
- EOS VR Utility で正距円筒・SBS に変換
- 最も安価かつ高画質な VR180 の選択肢
② データサイズが「その日撮れる長さ」を決める
片目 8160×7200 × 2眼 × 90fps を RAW で記録するので、1カットごとにギガ単位で積み上がる。
- 現場では SSD への吸い出し計画(誰が・いつ・どこで移すか)を撮影スケジュールと同時に立てる
- 「カメラの性能」より「データを置く場所と移す時間」で撮影できる量が決まる
- みなさんがスマホで4Kを撮るときも、まったく同じ問題が起きます
③ 難しかったところ — 撮り直しが効かない
撮影当日: 拘束6時間・実撮影2時間
| 7:00 | 機材セットアップ |
| 8:00 | アーティスト入り |
| 9:00 | 関係者入り |
| 10:00 | 撮影開始 |
| 12:00 | 撮影終了 |
| 13:00 | 撤収 |
スタッフ6名。編集・CG合成に約1ヶ月。
現場で決めていること
- ISO 400 に固定(初期値800から変更)
- カット割りより素材量を優先し、回し続ける
- 被写体は「HMDを着けて腕を伸ばした先」に置く
- 収録前に 左レンズが左目かを必ず確認
- スタッフが映り込みやすい(前方180°が全部画角)
③ グリーンバック撮影で「避けてほしいこと」
| 避けること | 理由 |
|---|---|
| 緑・青の服、光沢のある衣装 | 背景と一緒に抜けて、体に穴が空く |
| 背景に近づけすぎる | 緑の照り返しが肌と髪に乗る。2m 以上離す |
| 細かい髪・透ける素材・煙 | 境界がきれいに抜けない |
| 背景のシワ・影・照明ムラ | 抜きが不均一に。背景は均一に照らす |
| 速い動き・激しいブレ | ブラーで輪郭が緑と混ざる |
| 床のグリーンに座る/踏む | 足元が消える。接地部分が最も破綻する |
現場で「合成後」を確認しながら撮る
④ 実際の映像 / ⑤ まとめ
① 何を作ったか
- 国指定 重要無形民俗文化財(福島県 相馬市・南相馬市)
- 1000年続く神事を 8K・3D の VR に
- 撮影 2026年5月23〜25日の3日間
- 仕様: 180°/360°・3D立体・8K推奨・60fps以上・アンビソニックス
- 相馬家34代当主の監修
- いま編集の真っ最中(102カット)

コンセプト「音が生まれ、走り、祈りになる体験」
| 章 | 時間 | 内容 |
|---|---|---|
| Ⅰ 静 | 0:00–2:00 | 完全な闇。水滴のような音 → 心拍 → 遠くで法螺貝が鳴る |
| Ⅱ 動 | 2:00–4:30 | 白鉢巻を締める。甲冑の金属音。馬に跨った瞬間、視線の高さが変わる |
| Ⅲ 爆 | 4:30–6:30 | 甲冑競馬の蹄音、神旗争奪戦。判断が消え「無我」へ |
| 余韻 | 6:30–7:30 | 砂塵が静まり、風だけ。最後は無音 |
VRならではの価値=騎馬武者の視点。観客席は現地で体験できるが、馬上はほぼ誰も体験できない。
② どう作るか — 使った機材

52g・甲冑POV

低位置・地面

装着用


| 用途 | 機材 |
|---|---|
| 8K 3D VR180(主役の立体映像) | Canon EOS R5C + RF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYE |
| 会場全景 360° | DJI Osmo 360(8K30) |
| 騎馬武者POV(甲冑に装着) | DJI Osmo Nano(52g) |
| 空撮 | DJI 360°対応ドローン(455g機・航空局の許可取得済) |
| 音声 | アンビソニックマイク(空間音響) |
② シーンごとに、カメラを変える
| シーン | VR固定 | 馬上(POV) | 地面・低位置 | ドローン |
|---|---|---|---|---|
| 総大将出陣式 | ✅ | ✅ | — | — |
| お行列 | ✅ 2〜3か所 | ✅ | ✅ | ✅ 遠景 |
| 甲冑競馬 | ✅ 3か所 | ✅ | ✅ コース内地面 | 競技外で |
| 神旗争奪戦 | ✅ 櫓+地上 | ✅ | — | 競技外で |
| 野馬懸 | ✅ | ✅(御小人) | ✅ | 競技外で |
| 早朝・準備時間 | — | — | — | ✅ 積極活用 |
3日間・複数会場・同時進行。誰がどのカメラを持ち、いつ付け替えるかまで事前に割り振ります。
③ 難しかったところ — 甲冑にカメラを付ける
許可は三層
執行委員会 → 騎馬会 → 個別の家(甲冑の所有者)
NG になった方式
- 兜マウント …「かっこ悪い」+競技では兜を外す
- 両面テープ … 漆が剥がれる
- 穴・ボルト・接着剤 … 家宝への損傷。絶対不可
→ 採用は クリップ式+落下防止紐、喉輪マグネット、鎧直垂のグロメット穴


③ カタログスペックは、あてにならない
| 機材・モード | 連続録画 |
|---|---|
| Osmo Nano 2.7K30+耐久モード | 1時間OK(採用) |
| Osmo Nano 4K60 | 発熱で短縮 |
| Osmo 360 8K30 | 37分で終了(電池残20%) |
→ 実運用の連続撮影は 約30分が上限。長時間シーンは予備バッテリー必須。
現場の工夫
- LEDを消す(甲冑装着時に光るとバレる)
- 操作音をミュート(神事の空気を壊す)
- 冷えピタを貼る(発熱対策)
- 予備電池 各3〜4本/SDカードは V90
④ ドローンで撮る — 許可を取れば、撮れる
野馬追では 国土交通省の飛行許可+主催者の書面許可を取って、実際に空撮しました。
| シーン | ドローン | 備考 |
|---|---|---|
| 早朝・準備時間帯 | ✅ 撮影した | 雲雀ヶ原・小高神社の会場全景。いちばん自由に飛ばせる |
| 会場俯瞰(競技の合間) | ✅ 撮影した | 馬がいない時間帯を狙う |
| お行列 | ⚠️ 遠景から | 沿道に観衆。馬列には近づかない |
| 甲冑競馬・神旗争奪戦の競技中 | ❌ | 馬が驚くため。安全が最優先 |
申請の流れ: 国土交通省(航空局)へ1〜2か月前に申請 → 主催者(執行委員会)と調整 → 市へ事前相談 → 当日は主催者の安全指示に従う。
「できない」ではなく「手続きをすれば、できる」。逆に手続きを飛ばすと一発でアウトになります。
④ 祭りを空から撮る — 青森の事例

青森では 「3D青森祭りの魂」(青い森ホール/360°3Dデジタル映像シアター)を制作しました。
- ねぶた祭りのような「光の彫刻」は、平面の動画では一面しか記録できない
- ねぶたは 祭りの翌日に大半が解体・廃棄される
- = 記録そのものが保存になる
相馬野馬追・真葛焼・ねぶた祭りを事例に「XRで日本文化を記録・表現する」を扱った回です。
⑤ オープニングCG — AIと手作業の分担

オープニング映像・23.5秒
- 馬が突進 → ホワイトアウト(4秒)
- 霧が7秒かけて晴れ、闇に 月明かりの九曜紋(8秒)
- 9つの円を青い光が一周 → 発光 → 消灯(5.5秒)
- 筆文字の題字が飛来しカメラを貫通 → 白(6秒)
VR版では題字が 耳の横を実際に通り抜ける。
| 担当 | やらせること |
|---|---|
| 画像生成AI | 夜の神社の風景(実写写真に忠実に) |
| 動画生成AI | 馬の突進・霧が晴れる・終幕のホワイトアウト |
| Python(数値計算) | 九曜紋の9つの円・光が一周する動き |
| ブラウザで描画 | 筆文字の題字(原画をパス化して5文字に分割) |
⑤ オープニングCG — 3回作り直した
| 版 | 指摘 | 対策 |
|---|---|---|
| v9 | 冒頭がガタつく | 全工程を24fpsに統一(素材ごとにfpsが違っていた) |
| v9 | 神社がAIっぽい | 実写写真に忠実な生成に切り替え |
| v10 | 動画生成の尺の上限に当たる | その部分をプログラムのCGに置き換え |
AIは微妙にカメラを動かす → 星を追跡して、映像側で止めてから合成している。
「AIっぽさ」は具体的に指摘できる: 文字が崩れる/円の数が違う/カメラが勝手に動く/質感が均一すぎる
⑤ まとめ — 機材選定の6原則
- 発熱と連続撮影時間は、実機で必ず負荷テストする — カタログスペックは目安に過ぎない
- 音・LEDは、場によっては必ずミュート — 操作音が空気を壊す
- F値は無闇に絞らない — 高画素センサーは F5.6 以上で回折ノイズが目立つ
- 装着は「外見」と「物理損傷」の両軸で許可を取る
- 付け替えのタイミングは、事前に担当者を割り振る — 当日の即興は失敗する
- 冷えピタのような汎用品を侮らない — 発熱対策の安価で確実な手段
→ 9/22 からの撮影実習でも、この6つをチェックリストにします。
太田の制作事例 ② 生成AI
4. 学生とつくった AI MV / 5. GRANRODEO AIプロモーション / 6. 真葛焼 プロジェクションマッピング
7. サッカー 2D→3D 変換 / 8. 生成AIライブ映像(3面スクリーン)
① 何を作ったか
- ICU「ものづくり入門」(PHY107)第8回
- 2026年6月5日・3時間の授業のなかで
- 履修者 15名と、AI で曲と映像を作る
- 完成: 25カット・4分27秒の MV
- 学生が担当カットの絵を設計し、AI が動かす

② どう作るか — 6つのフェーズ
| # | やること | ツール | 時間 |
|---|---|---|---|
| 1 | 曲を作る | SUNO | 15分 |
| 2 | 歌詞を全員で共同編集 | — | 20分 |
| 3 | 歌詞と時間を対応づける(音声認識) | faster-whisper | 10分 |
| 4 | スプレッドシートで 25カットを分担 | Google Sheets | 15分 |
| 5 | 各自が担当カットの絵を作る | 画像生成AI | 40〜60分 |
| 6 | 静止画 → 動画(25本) | Kling | 50〜60分 |
| 7 | 連結・BGM・字幕焼き込み | ffmpeg | 20分 |
→ 生成AIを使うときは「投げてから待つ」前提でスケジュールを組む。
③ 難しかったところ — 実際に踏んだ5つの罠
| 罠 | 何が起きたか | 対処 |
|---|---|---|
| 並列で生成する | 完成順がバラバラで、別カットの動画が混ざる。エラーは出ない | 1本ずつ生成する |
| 実在の作家名を書く | 「特定の作家のスタイルへの言及」で即拒否 | 視覚的な特徴で書く |
| 画面の誤クリック | 設定が消え、別の画面に飛ぶ | 自動操作は対象を厳密に指定 |
| 古い中間ファイルが残る | 差し替えたのに古い映像が出る | キャッシュを消してから作り直す |
| ファイル名の表記ゆれ | runwway cut20prt2 .png.png | 命名規則を先に決める |
「白いクマを想像するな」と言われると白いクマが浮かぶのと同じ。やってほしいことを書く。
④ 実際の映像 / ⑤ まとめ
見どころ: ① 25カットの絵柄をどう揃えたか ② 字幕が歌にぴったり合っている理由(音声認識で歌詞の時刻を実測している)
- ボタンひとつで曲と映像ができたように見えて、裏の準備がその何倍もある
- 学生がやったのは「担当カットの絵を設計する」— つまり 判断
- この日いちばん使った力は、何を選び、何を伝えたいかを決める力
① 何を作ったか


- ロックユニット GRANRODEO の 10thアルバム 『ChaosBlue』(2026年2月18日発売)のプロモーション映像
- 素材は ジャケット写真・アーティスト写真の静止画のみ。追加撮影ゼロ
- ロング版(高品質・30秒)+ ショート版(5〜10秒 × 30〜100本)の2軸
② 「アー写」から動画へ
スタジオで1日かけて撮り、そのあと数ヶ月〜1年、あらゆる媒体で使い回されます。
つまり 「すでに存在していて、権利もクリアで、高解像度の素材」が必ずある — ここが出発点。
- アー写・ジャケット写真(静止画)を用意
- 画像生成AIで 中間フレームを作る
- image-to-video で数秒のクリップに
- アップスケール・カラーグレーディングで仕上げ
- ショート版は同じ工程を 自動化して量産
③ 品質と頻度は、別の作り方 / ④⑤
| ロング版(30秒・1本) | ショート版(5〜10秒 × 数十本) | |
|---|---|---|
| 目的 | 作品の顔になる1本 | 毎日出す・接触回数を稼ぐ |
| 作り方 | 人が磨く(演出・拡大・色調整) | 量産を自動化する |
| 品質の基準 | 完成度 | 「破綻していない」こと |
量産は ブラウザ操作の自動化で1本ずつ順番に。1本ずつしか投げられない(並列だと取り違える)/生成に数分 → 夜間に流す/失敗の理由を必ずログに残す。
① 何を作ったか
- 宮川香山 眞葛ミュージアム「崖ニ鷹大花瓶」
- 3Dプリントした原寸大の花瓶に映像を投影
- 約2分・60fps・縦4K(プロジェクタを90°回転)
- 演出家の絵コンテに基づく 23カット
- 展示は2026年10月3日から
② どう作るか / ③ 実物はAIに描かせない
- Blender で3Dの奥行き・マスクを自動レンダリング
- 色のパレットを自動解析
- 画像生成AI でカットごとのキーフレーム
- 花瓶を固定座標に合成(← AIには描かせない)
- image-to-video で動画クリップに
- Real-ESRGAN で4Kへ拡大 → ffmpeg で組み立て
- 現場では専用ソフトで実物の形に合わせて投影
カット構成を1ファイルで管理 → 演出家が 15→23カットに増やしても組み直さずに済んだ。
- 花瓶は実在する。AIが描くと形が変わる → 固定座標に合成
- 鷹はマスター画像を1枚作り、全カットの参照に → 同じ個体・同じ羽色
- 動画にする前に 静止画の段階で合意(1本5〜10分 × 23カット)
④ 実際の映像 / ⑤ AIに指示する5つの鉄則
見どころ: ① 縦長の映像(プロジェクタを90°回して花瓶の形に合わせる) ② 花瓶の位置がカット間でズレない ③ 背景・鷹・光はAI生成
- サイズと座標は画像で渡す — ✕「花瓶を上の方に」→ ○ 位置を白く塗ったマスク画像
- スタイルは完成イメージ1枚で渡す
- 参照画像の解像度を落とさない — 低解像度を入れると低品質しか返ってこない
- 動画にする前に静止画で合意する
- 制約は数値で書く — ✕「小さく」→ ○「高さ=フレームの30%、中心(0.29, 0.52)」
① 何を作ったか / ② どう作るか
① 何を作ったか
- ふつうの 2D映像を、立体(3D)に変換する
- 『STAND BY ME ドラえもん』全編、『ONE PIECE FILM GOLD』一部でもやってきた仕事
- いまは サッカー映像の8K立体化を進行中
- 従来は市販ソフト+自社開発プラグイン。それが古くなり、オープンソースだけで置き換えるプロジェクト
② どう作るか
- 深度推定AI で「どこが手前で、どこが奥か」を推定
- その奥行きをもとに もう片方の目の視点をずらして作る
- ずらすと 写っていなかった部分に穴が空く
- その穴を AIで埋める(インペイント)
- 視差の量を調整して 快適に見える範囲に収める
仕上がりは「なんとなく立体に見える」で判断しない。左右の構造の一致・実測の視差・穴の有無を 数値で測って合否を出す。
③ どこで見られるか — 実際の展示
3面スクリーンの超最新3D LED映像+360°サラウンド音響による没入型シアター。ワールドカップ期間はパブリックビューイングも実施。
3Dディスプレイの話:この展示では 大型のLEDディスプレイを使っています。 映画館のようにプロジェクタで投影するのではなく、LEDパネル自体が発光するので、明るい場所でもコントラストが落ちません。 屋外・商業施設での立体映像はこの方式が主流になりつつあります。 LEDディスプレイの設計・施工は ヒビノ(ヒビノクロマテック)などの専門会社が担当します。
⑤ まとめ — 立体の「快適さ」は測れる
- 視差が強すぎると疲れ、弱すぎると平面に見える
- スクリーンの大きさ・見る距離・その人の瞳孔間距離(IPD)によって、快適な範囲は変わる
- だから「作ってから確かめる」のではなく、設計の段階で計算する
立体・VR・大画面の映像は、人の身体に負荷をかけます。作る側は「見せ方の限界」を知っておく必要があります。
① 何を作ったか
- コの字型に囲む3面スクリーンへの投影映像
正面 5400×2300mm(プロジェクタ2台)+左右各1台 - 3分弱の ライブハウス映像
- 撮影ゼロ。曲も映像も全部AI生成
- マスターは 8192×4096 の全天球形式
- 視点は客席前方、目線1.55m、ステージまで5m
「ビールを飲むシーンを入れてほしい」
→ 実在バンドの名前はプロンプトに書けない(拒否される)。 視覚的な特徴に翻訳して伝えるのが最初の仕事になります。

② どう作るか
曲の拍を実測しているので、映像の切り替わりが音とズレません。
③ 難しかったところ / ④⑤
| 判断 | 理由 |
|---|---|
| 1クリップ = 1つの状態だけ | 途中で状態を切り替えると、5段階で27%・3段階で43%しか成功しない |
| 速い照明はAIにやらせない | 3面でズレる。合成後に拍のデータを基準に一括で乗せる(誤差9ms) |
| 生成物は 確認するまで信用しない | 別のクリップが混ざる事故が起きる |
| リップシンクは 測れない | 口の動きと声の相関 r=0.003。手順を固定した目視に落とす |
→ 束で投げる前に1本で疎通を確かめる/失敗の理由を必ず残す。
8作品に共通するもの
| VRの仕事 | 生成AIの仕事 | |
|---|---|---|
| 共通するもの | 撮る前に決める | AIに任せない部分を決める |
| 失敗の場所 | 電池・発熱・許可・ネットワーク | 取り違え・一貫性・文字の崩れ |
| 判定の方法 | 実機で測る(負荷テスト・同期精度) | 数値で測る(視差・構造の一致・拍) |
| 人間の仕事 | 何を撮るか・どう見せるか | 何を選ぶか・どこで止めるか |
ミニワーク(20分)
20分で、①自己紹介 と ②今日見た中でやってみたいと思った技術 について話してください。
話すこと
- 自己紹介 — 名前/希望するメジャー/映像や写真の経験(なくてOK)
- やってみたいと思った技術 — どれ? なぜ?
| ① | 360°/VR180の3D撮影 | ② | 100台同期の上映 | ③ | グリーンバック+CG合成 |
| ④ | AIで曲と映像を作る | ⑤ | 静止画から動画を作る | ⑥ | プロジェクションマッピング |
| ⑦ | 2D→3D変換 | ⑧ | 生成AIによるライブ映像 | ⑨ | ドローン撮影 |
最後に、グループでどんな話をしたかを発表してもらいます。
上映リスト(授業中のみ・太田のPCから再生)
| # | 作品 | 尺 | 流す量 |
|---|---|---|---|
| 1 | 作品2 アーティストの 3D VR(ラフカット) | 9分44秒 | 冒頭1分 |
| 2 | 作品3 相馬野馬追 VR(全編たたき・2D版) | 31分 | 抜粋2〜3分 |
| 3 | 作品3 オープニングCG v9 → v12 | 20秒 → 23.5秒 | 両方 |
| 4 | 作品4 AI MV『ハッピーフライデーの修羅場』 | 4分27秒 | 冒頭2分 |
| 5 | 作品5 GRANRODEO ロング版/ショート版 | 30秒/10秒 | 両方 |
| 6 | 作品6 真葛焼 1カット | 8秒 | ループ |
| 7 | 作品8 生成AIライブ映像 PV版 | 21秒 | 全部 |
※ 映像はすべて授業中のみの上映です。配布資料からは再生できません。
次回から
| 日 | 内容 |
|---|---|
| 9/15(火) | これまでの作品を観る(前身科目の学生作品ほか) |
| 9/17(木) | 使用する機材の話・チーム分け・バーチャルプロダクション |
| 9/22〜10/1 | 撮影実習(3週間) |
| 10/6 | 編集 |
使うソフト(編集・生成AI)は すべて無料のものを、追って指示します。
コメントシート
- 自己紹介
- 希望する(している)メジャー
- 好きな映像(作品・ジャンル・YouTube でも可)
- 撮影してみたいもの
- 今日いちばん驚いた作品と、その理由
- いま自分が持っているもの
- カメラ(一眼/アクションカメラ/360°/ジンバル/三脚/マイク)
- 編集ツール(使ったことのあるソフト・アプリ)
- 生成AIのサブスク(契約しているもの)
- PC(OS・だいたいのスペック)
- 太田への質問
基本的に、授業時間内に提出してください。
当日24時以降は受け取りません。
3番は、撮影実習とチーム分けの計画に使います。「何も持っていない」でも全く問題ありません。
おつかれさまでした
次回: 9月15日(火)3限
この資料は受講生限定です。スライド・映像の撮影および再配布を禁止します。